11月16日(火)より、品川区内の商店街を横断する「大商業まつり デジタルお買物ラリー」が開催されています。老舗商店も多い商店街で、デジタルを取り入れたイベントを実施する狙いとは? 今後、商店街が目指していく未来とは?
主催である品川商店街連合会、後援する品川区、プロダクトを提供した株式会社エム・フィールドにお集まりいただき、お話を伺いました。
品川区商店街連合会 事務局 榎田陽子さん
主に販促を担当。エム・フィールドとコラボするきっかけになったイベント「デジマ式plus」にも品川区商店街連合会から代表として参加。
品川区役所 商業・ものづくり課産業活性化担当 小川和朗さん
区内産業の活性化支援を担う部署にて、IT企業・スタートアップ企業の支援を担当。
品川区役所 商業・ものづくり課商店街支援係 明石賢郎さん
区内産業の活性化支援を担う部署にて商店街支援を担当している。
株式会社エム・フィールド 営業統括本部 HiTAP担当リーダー 岸﨑比佐良さん
システム開発から人材育成まで、企業のDX化を支援するIT企業にて、自社プロダクト「HiTAP」事業を担当する。
<大商業まつりデジタルお買物ラリー概要>
品川区商店街連合会が主催する、年に一度のイベント「大商業まつり」にて、デジタルスタンプラリーを開催。品川区内の34商店街、123店舗が参加している。参加店で買い物し、1店舗につき1つもらえるスタンプを集めると、デジタルクーポンを入手できる。
進呈されるクーポンは、スタンプ3店舗達成で300円クーポン(先着1000名)、5店舗達成で500円クーポン(先着600名)。実施期間は11月16日(火)から12月19日(日)まで。
詳細・スタンプラリー参加は下記URLより
https://shoren.shinagawa.or.jp/event/8629
時流に合うイベントを考える中で生まれた企画
――品川区商店街連合会さんが主催している「大商業まつり」について教えてください。
品川区にはたくさんの商店街があるのですが、ここ数年は、新規住民の方が増えていることもあり、地元の商店を利用することについて「チェーン店には行くけど、個店には入りづらい」という地域住人の声もあります。そのような方に商店街を身近に感じてもらう一環として、開催しています。
――これまではどのような催しを実施してきたのでしょうか。
前年はすでに新型コロナウイルスが流行しており、一つの場所に集客させることが難しかったため、お客さんが近所で楽しめる方針に切り替えました。近隣の商店を回っていただけるように、商店街のチラシクーポンや、スクラッチのキャンペーンなどを実施しました。
昨年の流れを継いで、今年は密集対策もでき、商店での購買を促進することも叶うスタンプラリーを開催することにしました。そこに新たにITを少し入れてみよう、というのが今年のコンセプトですね。
新規事業創出ワークショップでの提案がきっかけに
――そもそも今回、商店街連合会とエム・フィールドがタッグを組むことになったきっかけは何だったのでしょうか。
そこでは、コロナ禍に商店街が抱えている課題に対して五反田バレーをはじめとする企業が事業提案を行いました。
▲武蔵小山商店街(画像提供:品川区商店街連合会)
――エム・フィールドは、デジマ式plusではどのようなご提案をされていたのですか?
▲「HiTAP®」のイメージ。専用のデバイス「Ocelly®」をスマホにタップすると、画面内にスタンプが押される(画像提供:エム・フィールド)
今回は大商業まつりの「デジタルお買物ラリー」ありきでお声がけいただいたので、デジマ式で提案したパッケージについては実現できてはいないのですが、商店街に関わる貴重な機会をいただいたので、知見を得られたらなと思っています。
商店街ぐるみでデジタルに慣れる、その第一歩にしたい
▲北品川商店街(画像提供:品川区商店街連合会)
――今回、エム・フィールドさんのプロダクト「HiTAP®」の採用に至ったのはどのような理由からでしょうか。
「HiTAP®」は、スマホだけで完結せず「スタンプがわりのデバイスがある」というのが特によかったんです。デバイスを手に持ってスタンプを押すといった“アナログな作業”が残っている方が、デジタル初心者の方達にはわかりやすい。紙のスタンプラリーと同じような流れで実施でき、オペレーションが少なくすむのが、商店から受け入れてもらいやすいポイントでした。
「自分たちにもITを活用できる!」と思ってもらう最初の第一歩として、ハードルが低いサービスだと思います。
▲スタンプの印影も、店舗ごとに異なるそう。店を周るのが楽しくなる仕掛けが施されている
――わかりやすいですね!
――実際に、商店街の方達からの反応はいかがでした?
――デジタルお買物ラリーの参加店も123店舗と、かなり受け入れられていますよね。
参加者にとってもお店にとっても、参加しやすいイベントを目指す
――今回の企画で、意識した点などはありますか?
たとえば参加店が列挙された台紙を用意し、利用者に店舗を周ってもらう周遊型などがあります。でも、今回はそれだとスタンプ台紙が長くなってわかりづらいので、単純に5個の穴を準備して、任意の店舗で5つスタンプを集めてもらうという仕立てにしました。
▲スタンプラリーの台紙画面
――5つ集めれば良いというシンプルさが、どの世代にも受け入れられそうですよね。
――商店街連合会がこだわったポイントはありますか。
――お店のバリエーションも多いですね。
異業種の集まる商店街らしさが出ているかなと思います。
データ活用で、さらなる課題解決の契機に
――今回の施策を通して期待していることはありますか?
1つは、これまで紙のスタンプラリーでは利用者のデータが集めにくいという課題がありました。今回は「HiTAP®」のシステムを使い、利用者の簡易な属性や購入店舗のデータを取れるようにしているので、そこから新たな知見が得られる可能性があることです。
もう1つは、キャッシュレスが一般化していく中、商店街では導入が遅れているので、少しずつIT導入を進めるきっかけになるのではないかということです。
▲デジタルスタンプラリーに含まれているアンケート画面
――商店街連合会として、今後どのようなことに力を入れていきたいですか?
また、商店街の店舗の中には「商店街に所属する」ということに抵抗感を持たれる方もいらっしゃるんです。でもそういう方達も、その地域を盛り上げたいという思いは商店街と一緒なんですよね。「組織」が先にあるのか、「仲間」という形から入るのかというアプローチ方法が違うだけで、地元でイベントを開催したいという思いは昔から変わらないスタイルなんだと思います。
商店街という文化を守るためにも、まずは商店街の存在意義を見つめ直しながら、商店街連合会の目的をお伝えして仲間を増やしていく機会は持っていきたいなと思っています。
――品川区と五反田バレーで、今後やっていきたいことがあれば教えてください。
また、商店街だけでなく、他の業種、たとえば製造業とのコラボなど、行政が間に立つことでうまく橋渡ししていければと思います。
――商店街や地場産業と、IT・スタートアップ企業が手を組んで、品川区全体で少しずつ未来へ進んでいくビジョンが見えました。本日は貴重なお話をありがとうございました!
取材・文/モリヤワオン(ノオト) 編集/水上アユミ(ノオト)