コロナ禍の影響でリモートワークが普及した昨今、作業環境における椅子の重要さに気付き、買い替えた人も少なくないはず。
デスクワーク中心であれば「長時間座っていても疲れにくい椅子が欲しい!」と考える一方、どんな椅子が自分に合っているのかわからないと悩む人も多いのではないでしょうか。
そんな悩みを解消できるのが、高機能ワークチェアのセレクトショップ「WORKAHOLIC(ワーカホリック)」です。店舗にはたくさんのワークチェアが置いてあるだけでなく、本人に合った椅子選びや体に負担のかからない座り方のサポートをしてくれるチェアコンシェルジュサービス(有料・予約制)を提供しています。
今回は実際に店舗へ足を運び、チェアコンシェルジュの方に高機能ワークチェアのご紹介や、負担のかからない座り方、ワークチェアを選ぶ際の基準について話を聞きました。
チェアコンシェルジュに聞く、負担がかからない椅子の座り方
今回、チェアコンシェルジュサービスを体験してもらったのは、五反田バレー企業であるSynamonの熊谷春香さん。肩こりと腰痛にお悩みのことで、高機能ワークチェアの購入も検討しているそうです。
Synamon
五反田バレー参画企業。創業以来、ヘッドマウントディスプレイなどのデバイス使用を前提としたXR領域の事業を展開してきたが、現在はPCやスマートフォンからでも利用できるメタバース領域に注力。2022年には、メタバースブランディングプラットフォーム「SYNMN」(シナモン)のオープンベータ版の提供を開始した。
熊谷さんに合うワークチェア選びをサポートしてくれるのは、チェアコンシェルジュの伊藤僚範さん。普段のサービスと同様に説明してもらいました。
WORKAHOLICでは、チェアコンシェルジュサービスを行う際、来店するお客さんにはいつも使っているデスクの高さと天板の奥行き、厚みを事前に測ってきてもらうとのこと。このデータをもとに、お客さんが普段使用しているデスクを店舗で再現し、これに合わせてワークチェアを選べるシステムです。
「ご自身に合ったワークチェアを選ぶ際には椅子だけに注目するのではなく、デスクとの相性を見るのも重要です。作業環境をすべてを再現できるわけではありませんが、当店では高さや奥行きなどを普段のものと同じデスクを用意し、ご自身に合ったワークチェアを選んでいただくだけではなく、高さやアームレストの位置などの調整も行います」(伊藤さん、以下同)
たしかに「せっかくワークチェアを購入したのに、作業しているデスクと合わなかった!」なんてことがあったら、大変です。普段の作業環境を再現してもらえるのはうれしいところ。
続いてお話しいただいたのは、負担がかかる姿勢について。
「画面を見ようとしてモニターに顔を近づけると、頭が体の軸から大きく前に出て、背中が丸まります。頭はボウリングの玉ぐらいの重さがあるのですが、その重さを首で支えようとすると、背中側の筋肉がかなり張った状態になります。そうなるとストレスを感じたり、血行が悪くなってしまい、肩こりや腰痛の原因になります」
では、負担のかからない姿勢をとるにはどうすればよいでしょうか?
「顔をなるべく前に出さないようにして、頭を背中の筋肉で支えるのではなく、背骨の上に乗せてあげることです。また、背骨の形も重要です。腹筋と背筋を引き締めると、横から見た背骨はS字のカーブを描いているのがわかります。しかし、作業に集中していると、そのような姿勢を取り続けるのは難しいでしょう。高機能ワークチェアは、背面がS字になっているものが多いです。この背面に体重を預けることで背骨のS字が維持できるわけです」
ワークチェアの背面にはそのような工夫が施されているのですね。ワークチェアの背面に体重を預けることで背骨がS字にできるとのことですが、そのような姿勢になるための座り方のコツを教えてもらえますか?
「座り方のポイントとしては、椅子の座面と背面が接しているL字部分にお尻を突き出すようにして、深く座り込むこと。このような状態であれば、長時間座っていても疲れづらい姿勢になります」
また、デスクワーク=PCの操作を長時間行うことでの注意点もあると伊藤さんは指摘します。
「デスクに向かっている際は、PCのキーボードを操作している時間が多いと思うのですが、ひじが体の軸より前に出てしまうと、肩が内向きになり、肩甲骨が引っ張られて、背中の筋肉が張りますし、少し浅い呼吸になってしまいます」
そのような姿勢にならないためにはどうすればよいですか。
「方法はいくつかあるのですが、まずはアームレストにひじを置くこと。こうすれば、ひじを引きながらキーボードを打つことができます。ひじを90度の角度になるようにしながら、アームレストにひじを置きましょう。また、アームレストとデスクの高さを合わせることも重要です」
「アームレストの調整が効かない、肩幅な小柄な方の場合、アームレストにひじを置けない場合もあります。その際はお腹がくっつくくらいワークチェアをデスク側に寄せてもらい、デスクにひじを置くといったこともできます。ただし、デスクの奥行きがないとモニターと顔がかなり近づくことになるので、奥行きが短いデスクを使う際はやはりアームレストにきちんとひじを置けるようなワークチェアを選ぶ必要がありますね」
ちなみに、アームレストの位置を上げるために、ワークチェアの高さも上げた状態にすると、熊谷さんの足が床につかなくなってしまいました。これはそもそもデスクの高さも合っていないのでしょうか。
「そうですね、高いのかもしれません。その場合は足置きを使っていただいて、高さをデスクに合わせるのがよいと思います」
高機能ワークチェア選びでまず注目すべきは座面
ヘッドレストやリクライニングが目を引きがちですが、ワークチェアを選ぶ際にまず注目すべきポイントは、座面と背面が自分に合っているかだと伊藤さんは言います。では、座面についてはどういった点を見ればよいのでしょうか。
「座面は大きく分けてメッシュタイプとクッションタイプの2種類あります。メッシュタイプのメリットは、薄い生地で通気性が良いこと。周りに枠があって、生地がピンと張っているような構造をしているため、体重をかけたときに生地がグッと沈み、その深さによって『フィット感があるな』『硬いな』など感じ方は変わります。ですので、その方の体重によっても座り心地は変わるんです」
画面右がメッシュタイプ、左がクッションタイプの座面
もう一つのクッションタイプはどのような特徴があるのでしょうか。
「クッションタイプは土台となるパーツがあって、その上にクッションがあり、そこにお尻を乗せる形。なので座ったときにズシンと受け止めてくれる安定性を感じると思います。もちろんどちらかが優れているという話ではなく、座り心地の感じ方は人それぞれなので、やはり実際に座ってみることが大事ですね」
続いて、背面についてはどんなところを意識すればよいですか。
「背面は、腰の部分を支えるランバーサポートがついていたり、背面自体がS字にカーブしていたりなど、背骨のS字カーブを保つための工夫が椅子によって異なるので、違和感がないか実際に座って試すのが良いと思います」
ありがとうございます! 座面と背面が自分に合うかを確認した上で、オプションとなるような機能も見るということですね。
「そうですね。ヘッドレストがあったほうがよいのか、アームレストがどのくらい可動するのか、どのくらいリクライニングするのか、デザインは気に入るかなどを見つつ、総合的に判断いただければと思います」
代表的な高機能ワークチェアをご紹介! 熊谷さんが選んだチェアは?
ひと通り説明を受けた後は、実際にワークチェアに座ってみます。とは言っても、店舗には15メーカー46種類70脚以上のワークチェアが置かれており、どの椅子を選ぶのか悩ましい……。そこで代表的なワークチェアを伊藤さんから紹介いただきました。
・オカムラ「Baron(バロン)」
「メッシュタイプの背面が首から背中、腰までをしっかり支えてくれるのが特徴です。座面はメッシュかクッションかを選べたり、頭を支えるヘッドレストや腰を支えるランバーサポートなど、カスタマイズできるパーツも充実しています」
・イトーキ「Act(アクト)」
画像中央がイトーキのAct
「国内メーカーの製品の中でもアームレストの可動域が大きいワークチェアです。上下、前後、回転角度など位置の自由度が高く、集中時とリラックス時に肘を置く位置を変えるというような使い分けができます」
・エルゴヒューマン「Ergohuman PRO ottoman(エルゴヒューマン プロ オットマン)」
「他の製品と大きく異なるのは、製品名にあるようにオットマン(足置き)が付いていること。リクライニングの角度も十分あるので、作業から一旦休憩する際、足を伸ばしてリラックスしたい人におすすめです」
・コクヨ「ing(イング)」
「長時間座っても同じ姿勢を続けて体に負担をかけないように、座面が360度あらゆる方向に少し傾き、揺れる構造になっています。揺れるといっても、あくまで体重がかかったほうに少し動くくらいなので作業中も特に気にならないかと思います」
さて、実際にいくつかの椅子に座ってもらったところで、熊谷さんにお気に入りのワークチェアを絞ってもらいました。熊谷さんが選んだのは、オカムラの「バロン」とイトーキの「アクト」。通常であれば購入する1脚を選んでもらうところですが……どれも魅力的で、2脚までしか絞れなかったとのこと。
チェアコンシェルジュサービスの最後の作業として、選んだワークチェアの高さなどの調整をしてもらい、今回の体験は無事終了です。
熊谷さん、今回の試し座り体験はいかがでしたか?
「これだけ多くのワークチェアがあるなか、実際に座ることで自分に合ったワークチェアを見つけることができて良かったです。いきなり高価格のワークチェアを購入するのはハードルが高いので、デスクの高さにきちんと合わせられるよう足置きを買うところから始めたいです」(熊谷さん)
デスクワーク中心であれば、なおさら長時間の使用が避けられないワークチェア。どの椅子を購入すればわからないと悩んでいる人は、WORKAHOLICのチェアコンシェルジュサービスを利用してみてはいかがでしょうか。
文=杉山大祐/編集=ノオト
取材協力:WORKAHOLIC