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街で働く100人を起点に、交流する 「品川区100人カイギ」第1回レポート

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2023年2月21日、「品川区100人カイギ」の第1回目が日本郵政不動産五反田事務所で開かれました。「100人カイギ」とは、その街で働く100人を起点に、人と人とがゆるやかに交流するコミュニティ活動です。

第1回目は、五反田で活動する5名がゲスト。話し手の熱量が伝わる規模感の会場で、登壇者の話を「拍手多め、うなずき多め、笑い多め」で聞く温かな場となりました。登壇者のトーク後は、来場者同士の交流タイム。同じ街で働きながらも話す機会がなかった人たちが、思い思いに交流を深めました。その様子をレポートでお伝えします。

「接客がない」接客業で新たなニーズを発掘

きになる嫁デラックスの総嫁長(ママ)

きになるホールディングス合同会社 代表 平野アミさん

昨年末、お店になかなか帰らないお客さんがいて……。『なんだろう』と思ったら、その方から100人カイギ登壇の話を持ち出されたんです。『店の改装を手伝ってくれたら、登壇してもいいよ』と伝えたら本当に手伝ってくれたので。断れなくなっちゃって(笑)
平野さん

「品川区100人カイギ」トップバッターの平野アミさんは、参加への経緯をこう語ります。

平野さんは、小料理屋「きになる嫁デラックス」などを経営する「きになるホールディングス合同会社」の代表。33歳の頃、夫の事業解散をきっかけに、同店を目黒川沿いの飲食街・五反田ヒルズ内にオープンしました。店は順調に売り上げを伸ばし、2019年には2号店「きになる嫁武道館」を同ビル内にオープンします。

『きになる嫁武道館』は、カラオケ機器を設置していますが、私の中ではスナックではなく、あくまでライブハウスという位置づけ。同じ空間にいる人同士が曲を介して楽しむことがコンセプトです。だったら、盛り上げ役の従業員はその場に必要ないんじゃないか? そう考えて、『きになる嫁武道館』では接客がない接客業をやっています。
平野さん

「きになる嫁武道館」の接客は、平野さんいわく「Zoom営業スタイル」。食べ物が欲しい時やカラオケ機器の使い方がわからない時には、小料理屋「きになる嫁デラックス」のスタッフをZoomで呼ぶ、という方式です。

接客がない接客業は、麺が入っていない『どん兵衛』のようなもの。私はどん兵衛が好きなのですが、最近は『どん兵衛の中でも、とくに汁が好きだ』と自覚したんです。だから麺は娘にあげて、汁だけすするようになりました。商品の主軸である麺がなくても、それを楽しむ客がいる。私が始めた『きになる嫁武道館』も、同じなのかもしれません。
平野さん

2022年には、より「接客のない接客業」を追求した3号店「きになる母館(ぼかん)ニューヨーク」を東五反田の有楽街にオープン。お酒は客が自ら作るスタイルで、お酒の濃さを調節したり、好きなタイミングでお酒を取りに行ったりといった、これまでの飲食店では取りこぼしていた新たなニーズにも対応できているといいます。

配膳を求めてくれるお客様もいるけれど、うちの店のような接客もありなのかもしれない。これからも、麺のない『どん兵衛』の汁を私が愛するように、皆さんに温かな汁を注げる店を続けていきたいです。
平野さん

商品の主軸がないことで新たな価値を創出する。平野さんの一風変わった発想に、会場内は拍手に包まれました。

中学で学んだ「分析して再現性を検証する」を事業でも展開

株式会社ハイウェイ Co-founder COO

一般社団法人五反田バレー 代表理事 中村岳人さん

一般社団法人五反田バレー代表理事の中村岳人さんは、事業を展開する際に大切にしている自分の軸をプレゼンしました。

中村さんは滋賀県出身で、中学校は「毎日窓ガラスが割れる荒れ具合」だったそう。クラスメートのあまりの荒れっぷりに命の危険を感じた当時の中村さんは、関西のスクールカーストで「何をしても許される」ポジションの「面白い奴」を目指すことを決意します。毎日、テレビ番組のお笑い番組を録画して人気芸人のおもしろさを分析しては、日常会話で再現できるように落とし込んでいきました。

その努力が報われて、中学校では「面白い奴」ポジションを確立。ヤンキーっぽいクラスメートから、「お前は面白いから何しても許すわ」と評価され、中学校を無事に卒業することができたそう。

その後、中村さんは「面白い奴」ポジションを築くために培った「分析して、再現性を検証すること」にハマったと語ります。

私が代表理事を務める五反田バレーの設立も、この分析の結果でした。2018年当時は、ベンチャー企業同士が手を組み、取り組みに応じた協会を立ち上げることが多く、五反田バレーでもこのトレンドを活用できないか、と思ったんです。
中村さん

うまくいっている仕組みを分析して、エッセンスを抽出する。それをブルーオーシャンの領域で広げていく。その手法は、中村さんの趣味「お笑い(やる方)」でも発揮されます。フリースタイルラップやeスポーツの社会人向け大会が話題となった2019年頃には、「社会人漫才王」を主催しました。これも、趣味に関する社会人向け大会の事例からエッセンスを抽出し、ブルーオーシャンで再現した結果だと言います。

0から1を生み出すのは得意じゃないけど、真似しながら盛り上げるのは得意なんです。
中村さん

そう語る中村さんは、現在、2021年に立ち上げた株式会社ハイウェイで、パートナー企業との安全な営業データ連携やパートナーエコシステムの拡大を支援するクラウド型のソフトウェアを運営しています。こちらも、海外で多くの事例があり、日本風のアレンジをして発展させていきたいそう。

今後の目標は、五反田バレーで大企業とスタートアップの協業事例を増やす、株式会社ハイウェイで活用事例を増やす、それに社会人漫才王にスポンサーを付けること。興味のある方はぜひ声をかけてください。
中村さん

中村さんの話に、「おもしろい発想の仕方だな」という来場者の声が聞こえてきました。

自然治癒力を高める鍼施術で、「五反田の保健室」を目指したい

TRIGGER鍼灸院代表

ReBodyCraft株式会社代表取締役社長 小池謙雅さん

TRIGGER鍼灸院代表の小池謙雅さんは、2007年~2012年まで、鹿島アントラーズトップチームトレーナーを務めた鍼灸師です。今回の登壇では、疲れ目の人を会場から選び、ヘッドマッサージを実演しながらのプレゼンとなりました。

唐突ですが皆さん、元気ですか? 健康ですか? 健康の定義って、なんだと思いますか?
小池さん

小池さんは健康の定義を「心身が充実し、やりたいことをやりたいときにできる状態」と定義づけ、「瞬間最大風速を期待するものではなく、死ぬまで維持すべきもの」ではないかと語ります。

そんな小池さんが運営するTRIGGER鍼灸院では、健康維持を助けるために、鍼施術や整体を行っています。とりわけ鍼施術については、小池さんいわく「自然治癒力を高める効果がある」とのこと。

鍼施術は、指を切って出血し、かさぶたができて自然に治るのと同じ仕組みです。繊細な傷を鍼で幹部に当てる。そうすると、体は傷ついた箇所を修復するために血管を拡張させ、老廃物などが流れ、痛みのない筋膜へ再生するんです。
小池さん

鍼は、体のコリや慢性的な痛み、しびれ、古傷のほか、自律神経による問題などにも効くそう。TRIGGER鍼灸院ではコロナ禍中期以降、うつ症状の改善のために通院する人が増えたと言います。

人口が減少する日本では、一人ひとりが背負う負荷が大きくなっています。会社にとってもそれは同じで、社員一人が退職するだけで大きな損失となるでしょう。鍼で気持ちも体もリフレッシュすれば、職場で濃密なコミュニケーションが取れるようになり、離脱者も少なくなるのではないでしょうか。
小池さん

TRIGGER鍼灸院では、スタートアップ企業の福利厚生として導入される事例も増えているそうです。

鍼でアプローチすることで、「五反田の活気と日本の生産力を支えたい」と意気込む小池さん。「将来は、五反田で働く人たちの保健室のような存在になりたい」と目標を語りました。

モルックでスタートアップ企業のコミュニケーションを活性化させたい

五反田モルック協会(株式会社ヴィックスエイジ モルック部 部長)

松木一真さん

五反田モルック協会の松木一真さんは、アウトドアスポーツ「モルック」の魅力を発信しました。

松木さんは大阪出身で、上京と共に株式会社ヴィックスエイジへ入社。同社のモルック部に入部したことをきっかけに、モルックと出会ったそう。

モルックとは、複数の木の棒を使うスポーツです。木の棒を投げて、数字の書いた棒を倒し、得点を競います。得点がぴったり50点になったチームの勝ちです。

モルックはルールが簡単で、誰でも挑戦できるのが魅力です。激しく体を動かすこともないので、オフィスワークの格好のままでプレーしたって、何も問題ありません。
松木さん

そう語る松木さんは、「ベンチャーやスタートアップ企業が多い五反田という街で、モルックを使って、コミュニケーションの活性化を図りたい」と目標を語ります。

松木さんが所属する株式会社ヴィックスエイジや五反田モルック協会では、2月26日に品川区立日野学園グラウンドで「五反田モルック大会2023」を開催。一般社団法人五反田バレー代表理事の中村さんも大会に出場し、スタートアップ企業とのコミュニケーションとして、役立っています。

モルックで人と人のコミュニケーションを活気づけ、地域活性化する。その夢の実現へ、すでに一歩踏み出しています。

ゆうぽうと跡地にビルが竣工予定。スタートアップ企業の後押しも

日本郵政不動産株式会社 長澤智也さん

日本郵政不動産株式会社の長澤智也さんは、品川区西五反田のゆうぽうと跡地で開発する大規模複合開発「五反田計画(仮称)」について、自身の育った愛知県の自然とあわせて話しました。

長澤さんは、愛知県旧額田郡(現岡崎市)育ち。小学校は昼休みにシカが校庭を走り回るほど、自然豊かな地域だったと言います。その後、旧郵政省へ入省し郵便局の建設に携わった後、現在は日本郵政不動産株式会社で郵政の不動産開発を担当しています。

五反田と私の関わりは、ゆうぽうと跡地で工事を進める『五反田計画(仮称)』を担当していることにあります。ゆうぽうと跡地には、ホテルやオフィスが一体となった、地域に寄り添う複合施設が2023年12月に竣工予定です。
長澤さん

同ビルについて、長澤さんが主に紹介したのは2つ。1つは、緑あふれる開発についてです。同ビルの敷地面積約6,700平方メートルの地上階には常緑樹や落葉樹などを植栽し、緑豊かな憩いの場「五反田の森」を作る予定だと言います。

もう1つは、同ビル内に設置されるシェアオフィスについて。シェアオフィスにはサウナを設ける予定で、リラックスできる環境を整えます。その上で、「大企業とスタートアップが連携できるような機会を設けるなど、多様な出会いによる新しい価値の創造を促していきたい」と言います。

ビル全体としては、旧ゆうぽうとの地下躯体(建築物を支える基礎部分)を生かすことで環境に配慮した工事を進めています。ビルの床面積は旧ゆうぽうよりも広いため、地下躯体から斜めの太い柱が伸びる印象的なデザインとなる予定。工事が進むにつれて緑が増えていくはずなので進捗を楽しみにしてほしいです。
長澤さん

大規模複合開発「五反田計画(仮称)」が進むことで、多様な出会いが育まれ、新たな価値が創出されるきっかけとなっていくことでしょう。

この後、会場内ではネットワーキング(交流会)を開催。来場した人々が名刺交換を行い、自身の行う事業やサービスについて語りました。

今まで知り合うことのなかった隣人と話をすることで、品川の新しい価値に気づく。もしかするとその中からは、品川から東京、そして全国へと広がるような新しい価値が生まれてくるかもしれません。

取材・文:ゆきどっぐ、撮影:渡邉茂樹、編集:ノオト

第2回 品川区100人カイギ 開催決定!

4月25日(火)19時〜21時予定
会場:品川区内・五反田エリアを予定

会場詳細やゲストは後日発表します。どうぞお楽しみに。

「品川区100人カイギ」公式サイト

「品川区100人カイギ」公式Twitter

「品川区100人カイギ」公式Facebookページ

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