パーティーの場ではもちろん、企業の交流会でも遊ばれる、カードやコマを使った「アナログゲーム」。プレイヤー同士でコミュニケーションを楽しみながら遊べることや、その人の隠されたキャラクターが出てくるといった理由で、さまざまな場で遊ばれる機会が増えているようです。
そんな数多くのアナログゲームのなかに、IT企業やシステム開発がテーマになったものがあるのはご存じでしょうか?
本日は、「システム開発」がテーマのアナログゲームを2種類ご紹介。五反田計画編集部のメンバーでゲームを体験した、その模様と感想をご紹介します。
▲遊んでみるのはこちら。『顧客が本当に必要だったものゲーム』(左)と、『Fat Project』
すぎやま
テレビゲームもアナログゲームも大好き。コロナ禍以降は遊ぶ機会が激減してしまい、皆でわいわい遊んでいた生活が恋しい。
もりや
アナログゲーム初心者。「戦略性とはなんぞや」というレベルなので、とにかく今日は盛り上げ担当を頑張りたいと思っている。
いとう
この記事を書いている人。ゲームの仕組みやコンセプトを理解するのは得意だが、駆け引きが致命的に下手。無難に立ち回るが、たいてい順位は下から数えたほうが早い。
皆で木を伸ばしてタスクを奪い合う『顧客が本当に必要だったものゲーム』
最初に遊んだのがこちら。反社会人サークルによる『顧客が本当に必要だったものゲーム』(以下、『必要だったもの』)。ITプロジェクトが関係者間の調整によって複雑化していく様子を風刺したイラストをモチーフにしたゲームです。該当のイラスト、一度は目にしたことがある人も多いのでは?
『必要だったもの』ゲームの大きな目的は、2名〜4名のプレイヤーが順番にカードを出し合って、大きな木のイラストを作り上げていくこと。順番でカードを出し合っていくなかで、獲得したポイントを競うゲームです。
プレイヤーの手札となるカード(成果物カード)には、プレイヤーごとの色分けがなされたうえで、「木の幹」「木の根」「木の枝にぶら下がったタイヤ」等のイラストが書かれています。
手札は、ゲーム開始時に置かれた「木の根」のイラストに繋げるかたちで配置していくのがルール。先の風刺画のような木を作り上げるなかで、提示された課題をクリアしてポイントを競い合います。
ポイントを獲得する方法は2つ。ひとつは、木を作り上げていくなかでプレイヤー全員に対して提示される課題(要件カード)に書かれたタスクを達成すること。
「ブランコを設置する」「自分が出したカードを条件通りに配置させる」など、提示されたタスクをクリアしたプレイヤーは「要件カードを獲得した」ことになり、ポイントが加算されます。ちなみに、このゲームにおけるポイントの単位は「YTK(=やった感)」です。
▲「要件カード」には、どこかで見た気がしないでもない人がちらほら
もうひとつは、自分が出した成果物カードが隣接している場所をできるだけ多く作ること。ゲーム終了時、自分が出したカードが2枚以上つながって配置されている箇所がポイントになるため、自分のカードのみで構成された箇所をできるだけ広く、かつ多く作っておけば、その分たくさんのYTKを獲得できます。
そうしたポイント獲得ルールのほか、あるプレイヤーがすでに出したカードの上に別のプレイヤーが新しいカードを置く「上書き」、使用したいカードを1枚リザーブしておくことで、別のターンに2枚同時にカードを配置することができる「ストック」などのテクニックを活用しつつポイントを獲得していく…というのがこのゲームの流れ。
ルールに順応してくると「達成にはカードが2枚必要なタスクを、ストック機能を活用して獲得する」「他プレイヤーのカードがかたまって配置された箇所を、上書きを利用することでポイント数を減らしてしまう」という芸当も。とはいえ、習うより慣れろ。とりあえず遊んでみましょう。
▲プレイ中……
「関係者が多いプロジェクトって大変だよね」(すぎやま)
▲プレイ中の模様。この回は中央の木が想像以上に大きくなってしまい、隣に拡張した木の根が「根と葉」のみで構成されることに
▲ゲーム終了時の木はこんな感じ。木に吊り下げられた赤いソファが2個並ぶ様子はなかなかにシュールだが、これも「YTK」を奪い合った結果
管理不可な要因で結果が左右する『Fat Project』
次に遊んだのはこちら。遊戯部すずき組による『Fat Project』です。こちらのゲームは、シンプルに説明すると「変則ルール付きのブラック・ジャック」といったところ。
カードゲームの「ブラック・ジャック」は、手札の合計が21を越えないようにカードを引いていくゲームです。そして『Fat Project』では目標の数字に向けてプレイヤーが各々カードを引き、手札の枚数を増やしていきますが、ひと通りカードを引いたあとに大きな仕掛けが。
▲カードには、「点数のみ」が記載されているものと(左)、点数に加えて「特殊効果」が記載されているものが
プレイヤーが引く一部のカードには、点数と共にゲーム内の役割(特殊効果)が設定されています。最終的なカードの点数を合計する前に行われる「評価フェイズ」と、カードそれぞれの効果によって、手持ちのカードおよび合計点数(=評価点)が大きく上下する……というのが、このゲームのキモ。
ゲームの主な流れは、「要件定義フェイズ」「評価フェイズ」という2つのフェイズを通して、持っている点数が目標の点数に一番近い人が勝利、しかし目標の点数をオーバーしてしまうと脱落、というもの。
「要件定義フェイズ」は山札からカードを引き、目標を目指して点数を加算していく段階。次の「評価フェイズ」ではプレイヤーが手持ちのカードから特殊効果を持つカードを処理していくのが主な目的ですが……処理の対象になっているカードは以下のようなもの。
▲「外部委託」…自分が持つ一番小さな点数のカードを他プレイヤーに渡す(点数は譲渡先のプレイヤーに加算される)
▲「致命的な脆弱性」…他のプレイヤーにも強制的に同じだけの点数を加算させる
▲「未確定要件」…大きな点数(8点)のカードを他に持っていたらゲームの敗北が確定してしまう
などなど、最後の「評価フェイズ」を経ることで「要件定義フェイズ」終了時点での手札の点数が大きく上下し、その変動した数字が最終的なプレイヤーの点数になります。
▲一番小さな点数のカードを他のプレイヤーにわたす『外部委託』カードと、ゲーム内の最小点数(1点)が設定された『過労死』カード。要件定義フェイズ終了後に、この2つのカードが同じプレイヤーの手元にあったら……?
なにやら不穏な気配を感じるカードもありますが、とりあえず、遊んでみましょう。
▲プレイ中……
「丁寧すぎるくらいにキャパ管理して、想定外に備える」(もりや)
▲各プレイヤーの手札と、中央の山札と見せ札(写真はゲーム終了時)。プレイヤーは自分の手札に加えるカードを、ふせられている山札か、すでに内容が明らかになっている「見せ札」のどちらかから選べる。ここでも戦略性が