Amazon Web Services(以下、AWS)を利用するスタートアップ企業およびデベロッパー専用の施設「AWS Loft Tokyo」で11月19日、エンジニア向けのトークイベントを開催しました。
本イベントのテーマは、「インフラエンジニアのスキルアップとキャリア戦略」。五反田バレーと品川区が主催、さらにアマゾンウェブサービスジャパン株式会社とファインディ株式会社が協賛・協力企業として参加しました。
「どうすればインフラエンジニアになれるの?」「今後インフラエンジニアはどんなスキルを磨くべき?」など、これからインフラエンジニアを目指す人や現場で働く人のさまざまな悩みに現役エンジニアが本音で回答。イベントの様子をお届けします。
スピーカー(左から):Gavin Zhouさん、塩谷啓さん、塚田朗弘さん
<スピーカー紹介>
Gavin Zhouさん
フリーランスのエンジニア。スタートアップのインフラ技術顧問、インフラ構築、オンプレからクラウドまでインフラ周りのアドバイザー、構築を専門としてWebアプリや仮想通貨の取引基盤など幅広く携わる。
塩谷 啓さん
クラスメソッド株式会社 チームリライアビリティエンジニア。prismatix開発チームの生産性を向上するために採用、技術広報、チームビルディングを推進。前職のドワンゴでは技術コミュニケーション室の室長として、エンジニアの生産性を上げる活動を行なっていた。
塚田 朗弘さん
2015年8月よりアマゾンウェブサービスジャパン株式会社のソリューションアーキテクトとして、主にスタートアップ領域のお客様に対する技術支援を担当。技術的な得意/興味領域としては、サーバレス・モバイル系テクノロジー、カスタマーエンゲージメントソリューションなど。
インフラの面白さとインフラエンジニアのなり方
モデレーターを務めるのは、フリーランスのエンジニア桑原宜昭さん
- 桑原さん
まずは皆さんの仕事についてお聞きします。エンジニアの仕事にはさまざまな種類がありますが、そもそもインフラの面白さってなんなのでしょうか?
インフラは……つまらないですよ(笑)。成果が目に見えにくいので、達成感がないんです。面白さといえば、自分以外の誰かを支えられることでしょうか。表に出ない仕事だから褒められないけれど、やりがいは感じますね。
- Gavinさん
インフラエンジニアの本音をさらりと語るGavin Zhouさん。
- 桑原さん
続いて技術について教えてください。今回登壇いただいた3名は、AWSに関わるお仕事をされていますよね。AWSの登場前と後でインフラエンジニアの仕事に変化はあったのでしょうか。
AWS登場前は指紋認証などのセキュリティ条件がクリアできないことから、会社以外の場所での作業が現実的ではありませんでした。そのため、一般的に会社以外の場所で仕事をすることになるフリーランスのインフラエンジニアは食べていけないと言われていました。けれどもAWSのおかげで、そうした問題が解消されて、インフラエンジニアの働き方が変化しました。
- Gavinさん
- 桑原さん
AWSが働き方を大きく変えてくれたのですね。会場にはこれからインフラエンジニアを目指す人もいます。そうした人は何から始めればいいでしょうか?
AWS登場によって、インフラエンジニアとアプリケーションエンジニアの仕事の境目がなくなってきました。だから個人が自分自身のどこにバリューを見出すかによって、やるべきことは変わりますよね。
インフラエンジニアとしてバリューを出すのか、アプリケーションエンジニアとしてバリューを出すのか。または両方やって、フルスタックエンジニアの道を目指すのか。自分が得意なことから、エンジニアとしてのキャリアの方向性を導きだせばいいのではないでしょうか。
- 塩谷さん
- 桑原さん
なるほど。「インフラエンジニア」の定義が変わってきているんですね。
インフラエンジニアの仕事は幅広くて、今となっては定義するのは難しいですね。だからこそ、これからインフラエンジニアを目指す人には、変な線を引いてやることを制限してほしくないです。ぼやっとしたことしか言えないのですが、とにかく好きなことを突き詰めてほしいと思います。
- 塩谷さん
インフラエンジニアは儲かるの?
- 桑原さん
気になる人も多いと思うんですが……インフラエンジニアって、ぶっちゃけ儲かりますか?
そうですね……。他人の年収に興味ある人いますか?(笑)
- Gavinさん
そうなんですね、わかりました(笑)。フリーランスになる前は会社員として働いていました。所属していた会社はジャスダック上場を目指していた企業で、当時の年収は700万円でした。それからいろいろあってフリーランスになったわけですが、最近は月100万円から仕事の相談を受けています。
- Gavinさん
イベント当日のスライド資料
- 桑原さん
フリーランスでAWSの案件を受けた場合の月額単価相場をみると、1案件の平均単価は85.2万円。最高単価は150万円、最低単価は40万円となっています。この相場はGavinさんの体感として合っていますか?
だいたい合っていますね。金額に差はありますが、技術的なハードルが高い仕事をすれば、それだけ報酬も期待できるのだと思います。
- Gavinさん
- 桑原さん
では、会社に所属してインフラエンジニアをしている人は、どうやって給料を上げればいいのでしょうか。
給料は自身のレアリティ(希少度)と、残念ながら前職の給料で決まります。だから、今の職場で給料を上げたい、転職して給料を上げたいと思う人は、まずどうしたら自分のレアリティが上がるのかを考えてみてください。
世界一Reactが書ける人は給料が高くなるだろうし、きちんと役割をこなすだけの人は平均的な給料になるだろうし。自分のコアになるものを持って、そこにトゲをはやすことを意識すれば給料は上げられると思いますよ。
- 塩谷さん
何よりも希少人材になることが大切と語る、現役会社員エンジニアの塩谷啓さん。
キャリアで最も重きを置いていることは?
- 桑原さん
今後キャリアを積んでいく上で、皆さんが最も重きを置いていることはなんでしょうか。
常にチャレンジをすることですね。いま働いているAWSでも、最初は「英語どうするんだ?」ってところからのスタートでしたから。衝動でいまスタートアップをやっていますが、まだまだ挑戦するべきことがたくさんあるので、目の前のことに飛び込んでさらにキャリアを積んでいきたいですね。
- 塚田さん
キャリアを積むためにはチャレンジ精神が大切、と話す塚田朗弘さん。
仕事で重視にしていることは3つあります。1つはメンタルを強く保つこと。システムの問題が起こったとき、会社の上の人から何か言われたら「黙れ、いま復旧作業だから邪魔するな」と言っちゃいます。もちろんそこまで強い口調で言わなくても、現場のことを知らない人には邪魔をしないでほしいことは伝えた方がいいと思っています。2つ目は好奇心。エンジニアは時代の流れが早いから、新しいものを追う好奇心が大事です。3つ目は学習力。社会人になったら全く勉強しないエンジニアが多いですが、日々の積み重ねが大きな差を生み出しますから。
- Gavinさん
最も重きを置いているのは、スキルのポータビリティです。どこにでも持っていけて外に出せる技術は磨いていくといいですよ。あとはレアリティを高めるために、技術の掛け算をすること。僕は「エンジニア技術×喋る」の掛け算をしました。だからこうしてイベントに呼ばれ、結果的にインフラエンジニアとして生き残れているので。
- 塩谷さん
- 桑原さん
なるほど。参加者の皆さんも何か学ぶことや気付きがあったのではないかと思います。本日はありがとうございました!
普段はあまり注目されないインフラエンジニアのスキルやキャリアについて、現役エンジニアの生の声をたっぷりと聞くことができた今回のイベント。イベント後の懇親会は、スピーカーと参加者が直接話す時間が設けられ、和気あいあいとした雰囲気で行われました。
五反田バレーと品川区が主催するエンジニア向けのイベントは、今後も定期的に開催する予定です。五反田界隈のエンジニアは、ぜひイベント情報をチェックしてください。
五反田バレー公式サイト:https://gotanda-valley.com/
(取材・執筆:水上アユミ/ノオト 編集:伊藤 駿/ノオト)