2020年のコロナ禍を受け、オフィスを移転する企業が増えています。
同年8月の調査によると、「コロナ禍を受けてオフィス見直しを行った、または検討している」企業はおよそ6割強、中でも「占有面積の縮小」を考えている企業が多い様子。実際に、在宅勤務が中心になり人数分のオフィス面積が不要になった結果、よりコンパクトなオフィスに移転したり、場合によっては「オフィスは不要」として、コワーキングスペース等を利用したりして業務を継続する企業の取り組みも耳にするようになりました。
※ 「月刊総務」8月26日発表の調査より。
オンラインで自らのスキルを出品、もしくは出品者のスキルを購入できるスキルマーケット「ココナラ」を提供している株式会社ココナラも、今年8月にオフィスを移転しました。
しかしながら、ココナラの場合は「拡大移転」。五反田から渋谷へ場所を移し、オフィス面積も前オフィスのおよそ1.8倍となるなど、より事業拡大を意識した移転です。
一般社団法人五反田バレーには立ち上げ当初から在籍し、団体の理事企業も務めるココナラ。五反田から渋谷に移転したことで五反田バレーとの関係はどうなってしまうのか。そして、コロナ禍を受け現在のタイミングで「より広いオフィスを持つ」決断をした理由を、広報の柳澤芙美さんに聞きました。
渋谷の魅力は、「ベンチャーを受け入れる懐の深さ」
——実は『五反田計画』の編集部内でも、移転のニュースに驚くメンバーがたくさんいました。メディア立ち上げ当初からお世話になっていたので、「まさかココナラさんが五反田を離れるなんて!」と。
昨日、本社移転しました!
まだリモートワークと出社のハイブリットな出勤の形式ではありますが、ココナラという、新しいサービスを生み出し続けるため、「オフィス」という場で、アイデアを出し切磋琢磨しながら、邁進してまいります!— ココナラ広報・ツイ担 (@pr_coconala) August 25, 2020
——かなり前から決まっていた移転だったんですね。
担当業務ごとにフロアを分けたりする方法もあるのですが、代表の南(章行さん、代表取締役会長)の「ワンフロアで社員全員が入れるオフィスが理想」という意図もあり、少なくとも五反田のオフィスよりは広いフロアがある場所、という目標で新オフィスを探しました。
株式会社ココナラ 広報 柳澤芙美さん(取材はリモートで行いました)
——移転先を渋谷に決めたのはなぜだったのでしょう?
渋谷で借りたオフィスの1つが、いまココナラが入居している渋谷インフォスタワー(※)の近くにあったそうなんです。南は、そこで働いていた当時から「いつかはあのビル(渋谷インフォスタワー)にオフィスを構えたい」と思っていたみたいで。
※ 1998年竣工の、渋谷区桜ヶ丘の複合ビル。過去にはGMOインターネット等のIT企業がオフィスを構えていた
——代表の夢がかなった拡大移転なんですね。
ココナラも創立間もない、売上が立っていない時期にオフィスを借りることができましたし、そんな若い企業を受け入れる懐の深さがあるのが渋谷の魅力なのかもしれません。
コロナ禍でも、移転計画に変更はなかった
——2020年は、新型コロナウイルスの流行によりリモートワーク中心に移行する企業が増えた年でした。オフィスをコンパクトにする企業も少なくないなかで、移転計画に変更が出ることはありませんでしたか?
——コロナの影響なく伸長しているのは、どういった理由でしょうか?
2019年12月と2020年の5月のサービス出品数を比較すると、2倍以上になっているんです。
「ココナラ」トップページ
ココナラ新オフィスの執務スペース
——なるほど、世の中がリモートワークとオンライン中心のコミュニケーションへ移行したことが大きかったんですね。
お店のロゴのデザインを依頼したり、ECサイトを構築してもらったり、中小事業者がココナラを利用してサービスを受けるケースが増えてきました。ココナラといえば「個人と個人がやりとりするサービス」、という印象を持っている人がどうしても多いと思うのですが……。ビジネス利用の拡大は2〜3年前から進んでいたことなんです。
——確かに、ココナラをフリマアプリのように「個人が出品しているものを個人が買うサービス」とイメージしている人は多いかもしれません。
コロナ禍を受けて、一般企業の働き方も大きく変わりましたので。そういったそれぞれの要素が、事業推進のきっかけになったのかな、と。なので、「コロナの影響で移転を見合わせよう」と考えることはありませんでした。
オフィスは、クリエイティブなアウトプットのためには欠かせない
——ココナラは現在もリモート中心で業務にあたっているそうですが、その結果、新オフィスは人もまばらな状況なのかな、とも思っています。経営者によっては「広くても、人が集まらないオフィスを持っている必要はない」と考えることもあるかと思うのですが、いかがでしょうか?
ココナラ新オフィスのラウンジスペース。コロナ禍の現在ではなかなか難しいものの、サービス出品者向けのイベントなどで使用する予定
——自宅と違って、オフィスは「仕事をするための環境」が整っている場所ですから。出社する人が少なくても、クリエイティブなアウトプットをするための刺激を得たり、皆で集まったりするための場所としてオフィスが必要なんだ、ということですね。
——たしかに、リモートワークが中心になってくると「人がたくさんいるオフィス」をストレスに感じることがあるかもしれませんね。渋谷という街の印象はいかがでしょうか?
新オフィスはミーティングルームを増やすだけでなく、増加するWeb会議のための電話スペースも設けたとのこと
——近年では都市としての変化も早く、雑多で刺激がある場所ですよね。
——そうですね。寄り道はコロナ禍が落ち着いてから、という感じでしょうか……。あとは『五反田計画』として気になっているのが、「ココナラさんと五反田バレーの関係はどうなっちゃうの?」ということでして。
——渋谷に引っ越したココナラは、五反田バレーから退会する……?
——それを聞けて安心しました。
五反田バレーとココナラ、それぞれにメリットがあるのであれば、今後も五反田バレーに関わり続けたいですね。
——今後も引き続きよろしくお願いします! 本日はありがとうございました。
(文=伊藤 駿/ノオト 編集=水上アユミ/ノオト)