五反田バレー企業の社員がおすすめコンテンツを紹介する連載「五反田バレーのクリエイターはこれを見てる」。第5回はfreee株式会社のプロダクトデザイナー戸塚真由子さん。経済の未来を予想した本、紙とインクのあらゆる印刷パターンを載せた印刷集、東京が舞台の映画をご紹介いただきました。
プロフィール
freee株式会社 戸塚真由子さん
部署:freeeカードUnlimited
肩書:プロダクトデザイナー
担当業務:ユーザーリサーチ、UIデザイン、プロトタイプ制作からプロダクトに関わる印刷物のデザインなど
勤続年数:1年4カ月
freee戸塚さんのおすすめコンテンツ
『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』
経済の仕組みや、お金とは何なのかを解き、資本主義の先にある経済のカタチを予想した本です。2017年当時に世間で話題になったビットコインやブロックチェーン、シェアリングエコノミーなどを絡めながら、経済・社会・企業・人々がどう変化していくか、私たちはどうやって生きていくべきか、わかりやすい文章で解説されています。
個人的には第3章「価値主義とは何か?」にある、「資本主義から『価値主義』へ」の見出し部分が本書の一番伝えたい部分かなと思いました。
“今後は、可視化された「資本」ではなく、お金などの資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わっていくことが予想できます。
私はこの流れを「資本主義(capitalism)」ではなく「価値主義(valualism)」と呼んでいます。
(中略)
あらゆる「価値」を最大化しておけば、その価値をいつでもお金に変換することができますし、お金以外にものと交換することもできるようになります。お金は価値を資本主義経済の中で使える形に変換したものに過ぎず、価値を媒介する1つの選択肢に過ぎません。”
-資本主義から「価値主義」へ(162〜165ページ)より
著者と同じく経済的に豊かではない家庭で育ったことが、本書に感情移入したきっかけです。読んだ当時は、エンターテイメント関係でデザインの仕事をしていました。その頃ちょうど仮想通貨が急速に世間に広まり、お金のあり方も進化し、IT化していくらしい、という感覚を持ちました。
同時にこれに乗り遅れることは無知だった幼少期を彷彿とさせ、経済×ITに興味を持たねば、と勝手に危機感を持っていたことを思い出します。
いつかfintech、お金というものにデザイナーとして関わってみたいというきっかけにもなった本です。これを読んだ数年後、こうして企業が「価値の創出」に集中できるよう、スタートアップを手助けするfintech事業に関わることができました。
『オフセット印刷サンプルBOOK』
スタンダードな紙×インクのありとあらゆる印刷パターンが網羅されている本です。印刷校正する時間がない、本業は印刷ではないが印刷をやらざるをえなくなった、そんな人の強い味方になる1冊だと思います。
私はWebのUX/UIデザイナーをやっているので、「印刷ができます」とは全く言えないのですが、スタートアップを担当していると、あらゆるデザイン業務を任されることはよくあります。どうにかプロダクトコンセプトを体現したクオリティの高い印刷物を作りたい、と奮闘していたときにこの本を見つけました。
この本は、多様な紙にいろいろな濃度パターンでインクが印刷されているだけなので、特に印象に残ったフレーズはありませんが、個人的には特殊インクや黒い紙への印刷具合が見られるのが魅力です。
5,940円と一見高く感じる価格ですが、内容から考えるとこの価格で購入できるのは衝撃的です。印刷物を扱ったことがないとただの印刷集なのですが、印刷をやってみると価値がわかる本だと思います。
この本を手に取ることで、少しは印刷できますと言えるようになったのではないでしょうか。またアートディレクションのみの案件でも、紙とインクを聞けば、ある程度完成品が想定できるようになったので現場で重宝しています。
・ご紹介コンテンツ
『オフセット印刷サンプルBOOK』(デザインのひきだし編集部)
映画『Lost in Translation』
東京が舞台のヒューマンストーリー映画です。おそらく撮影もそこまで予算をかけておらず、技術を駆使しているわけでもなく、淡々と進んでいきます。しかし、この映画が映し出す「東京」が自分のイメージと印象が違うように感じて、ノスタルジックで、キレイで、すごく面白いと感じました。
海外の友人に感想を聞いてみたら「行ってみたいぞ、東京」と思うらしく、日本または東京に住む人と、そうではない人で東京のイメージが違うんだろうなと思いました。東京の街並みが美しいので、ぜひ映画を通して感じていただきたいです。
鑑賞当時に限らない話ですが、私自身はWeb関連の、法人カードの体験を考えるデザイナーです。しかし、広い意味で同じクリエイターとして、人の心を動かすクリエイティブを生み出せる製作陣に感謝したい気持ちになりました。
この映画を選んだ理由が強くあるわけではないのですが、デザイナーになってからよく先輩に「遊べ、良いものを見ろ」と言われることがありました。たとえ今の仕事に直接関係なくとも、多くのことを観察しておくことが、いつか仕事につながるという意味なのかもしれないと、解釈しています。
もともとアニメ・漫画・映画が好きということはありますが、心が動くものならなんでも見てみる、やってみるのが良いと思っています。山に登るとか、カフェマニアになるとか、散歩するとか……好きなことはいつか仕事に生きるかもしれません。
取材・文・編集/ノオト