五反田バレーの活動を支援している品川区では、企業のエンジニア採用をサポートするため、「エンジニア確保支援事業助成金」が提供されています。
品川区の助成金では、採用1人あたりにつき支払われる最大額は50万円。しかし、社員を1人採用するだけで、会社側はお金に限らない多くの手間をかけているもの。
就職は売り手市場、エンジニアは慢性的な人手不足と言われる時代に、少しでも高いスキルを持ち、自社にマッチした人材を採用しようと企業は必死。求人媒体を活用したり、採用エージェントに依頼したり、企業からエンジニアへ直接連絡したり……と、さまざまな方法で採用活動を行っているのです。
しかし、そんな企業の苦労を「採用された側」の社員はどれだけ知っているのでしょうか? 自社が採用活動に力を入れていた理由、どうして自分を採用したのか、どんなコストがかかっているかなど、自分の採用について知らないことは意外と多いのでは……?
そこで、五反田バレー会員企業から「自分が採用されたときの話を聞きたい」エンジニアさんを募集。一緒に、人事担当者にお話を聞いていきます。
組織としてのフェーズから採用当時の方針、採用した人に会社が求めていることまで、お話を聞くなかでいろいろなことがわかりました。
低コストの求人媒体、採用時のコストのかけどころとは?
まずお邪魔したのは、クラウド営業支援ツール「Senses(センシーズ)」の開発・提供を行う五反田バレー理事企業、株式会社マツリカ。同社でバックエンド業務を担当する藤井亮助さんにお話を伺っていきます。
藤井さんは、求人媒体でマツリカを知り応募したとのこと。
藤井亮助さん
大手SIerの勤務を経て起業し、その後2019年9月にマツリカへ入社。主にバックエンド領域を担当している。社内でのニックネームは「うっでぃ」。
——藤井さんは起業をご経験していらっしゃるんですね。
——求人媒体経由での応募とのことでしたが、転職活動はいかがでしたか。
——面談にあたって、覚えていることや印象に残っていることはありますか?
※ マツリカ=「祭り化」が社名の由来。人々が夢中になり、充実感や達成感に満ちた状態を示す造語として名付けた
——藤井さんに代わって言いますが、いわゆる「パリピ」ですね。
人事担当・原田さんに聞いてみよう
藤井さんからお話を伺った後は、マツリカの人事ご担当の原田さんも交えて、採用の経緯を伺っていきます。
人事/バックオフィスご担当 原田美輝さん
——求人媒体への掲載は、採用チャネルとしてはどういった印象ですか?
——両者で料金形態もかなり異なるので、比較は難しいかもしれませんね。採用にあたっては、どういった部分に費用がかかるのでしょう?
——なるほど。媒体によって差はあるでしょうし、登録者層もそれぞれでしょうから、費用対効果は高いとはいえ掲載先も含めて検討しないといけないということですね。金額は後で文字化けさせておきましょう……。
——応募時にチェックしたプロフィールに、なにかキラリと光るものがあったのでしょうか?
求人媒体経由の採用の場合
・ コストは媒体の月額費用がメイン
・ 「その媒体のコストに見合う人かどうか」は慎重に考える
・ マツリカはパリピの会社ではない
——いけそうでしょうか?
リファラル採用は、紹介した人にもメリットがある?
次に、2019年11月にリファラル採用でマツリカに入社した佐々木俊介さんにお話を伺います。
マツリカ社員の友人に紹介されて入社を考えるようになった佐々木さんですが、リファラル採用の場合、企業側はどのような対応をしているのでしょうか。
佐々木俊介さん
入社前は、フリーランスのエンジニアをやりながら技術同人誌の制作を行っていた。現在は、プロダクトの高速化といったパフォーマンスチューニングに取り組んでいる。社内でのニックネームは「えるきち」。
——佐々木さんはリファラル採用で入社したそうですが、どういった経緯でマツリカに興味を持ったのでしょうか?
一番大きかったのは、社員が最大限のパフォーマンスを出せるよう、フルフレックスかつフルリモートでの勤務が許可されている、ということですね。
——マツリカは、在宅勤務がOKなんですね。
通勤や会議の時間とか、毎日身だしなみを整える、みたいな……。できればそういうことに、時間とお金を使いたくないなあ、と。
——入社にあたって、覚えていることや印象に残っていることはありますか?
例えば、我々のようなエンジニアはGitHubを使ったり、ブログや書籍を書き読みするなど、ベストプラクティスを共有する手段が多くあります。しかし、営業にはまだその「正解」がない。「営業支援ツールからコミュニティを立ち上げることによって、営業のベストプラクティスを共有したい」という回答でした。
——なるほど。
人事担当・原田さんに聞いてみよう
——佐々木さんも先ほどの藤井さんも、近いタイミング(2019年内)で入社されているんですね。
その中でも佐々木さんは、会社として手を付けたいけど付けられていない部分のスキルをちょうど持っている方だったんです。面接で佐々木さんと会った社員や代表からの評価も高く、そしてお話してわかる通り、人当たりもとてもよい方でした。
——採用にあたっては、どういった段取りで入社が決まったのでしょうか?
——リファラル採用の場合、コストはどの程度かかるのでしょうか?
——受け取る側からしてみれば、かなりうれしい金額ですね。佐々木さんはご存じでしたか?
——人事として、リファラル採用にはどういった印象をお持ちですか?
所属する会社を良いところだと思っていない人が、友だちにもマツリカを薦めよう、とはならないじゃないですか。そうやって知った会社で佐々木さんも働きたいと思ってくれて嬉しいですね。
リファラル採用の場合
・ 紹介者にフィーが支払われることがある(※マツリカの場合)
・ 自社を紹介してくれるということは、良い会社だと思ってくれている証拠
・ マツリカ社員は、紹介フィーで焼き肉にいく(こともある)
——とのことですが、佐々木さんは入社後いかがでしたか?
——ご協力いただきありがとうございました!
エージェント経由の採用は、向き・不向きがある?
続いてお話を伺ったのは、国内最大級のお出かけメディア「Pathee(パシー)」を運営している、Pathee株式会社。もうすぐPatheeに入社して1年になるという、齊藤圭世さんにお話を伺います。
齊藤圭世さん
イラストコミュニティサイトの運営会社からサブカル系IoTデバイスの開発業を経て、Patheeに入社。現在はフロントエンド業務を中心に、カスタマーサクセス部門やセールス部門とも協力しクライアントと向き合っている。
——これまでの経歴を拝見したのですが、かなりサブカルチャー寄りの会社でお仕事をされていたんですね。Patheeのお仕事に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?
——採用エージェントを通じて入社したとのことですが、転職活動はいかがでしたか?
——いわゆる「ブランク期間」というやつですね。
——そんな中でもPatheeに入社を決意できた、なにか後押しがあったのでしょうか?
面接が進むなかで久しぶりに彼に連絡を取りました。「Pathee、どう?」って聞いたら「大丈夫だよ」と。大学時代は内気だった彼がそう言っているので、自分でもやっていけそうかな、と思ったのを覚えています。
採用担当・原嶋さんに話を聞いてみよう
では、採用担当の原嶋宏明さんも交えて、齊藤さん採用の経緯を伺っていきます。採用時はかなりダウナーな時期だったという齊藤さんは、採用を担当した原嶋さんの目にはどう映ったのでしょうか?
マーケティングマネージャー 原嶋宏明さん
——齊藤さんを採用した決め手になったのは何だったのでしょうか?
プロダクトや技術を突き詰めたいタイプのエンジニアが多かったPatheeに、新しいメンバー入れてチームを活性化させよう、というのが当時の採用の目的だったので。ビジネスサイドに興味があるエンジニアが入社するといいなと思っていたんですよね。
——応募時、齊藤さんの経歴をチェックしたときの印象はいかがでしたか?
確か、面談で入社後の年収の提示をしたら、「もっと少なくていいです」と言ってたよね。
——会社側として、エージェント経由の採用にはどんな特徴があると思いますか?
費用としては、実際に採用した人の3割から4割をエージェントさんにお支払いすることが多いです。
エージェント採用の場合
・ 採用した人の年収の3割〜4割程度がエージェントに支払われる
・ 比較的コストは高め。ハイクラス採用で使用することが多い
・ Patheeは「大丈夫」。
——いい機会ですし、齊藤さんから原嶋さんに聞いてみたいことはありますか?
ダイレクトリクルーティングでは、奇跡が起きる?
最後は、同じくPatheeの土田力さんからお話を伺います。
エンジニア限定の転職サービスを利用してPatheeに入社した土田さん。ある求人媒体を通してこれまでの業務経歴を公開していた土田さんへ、Patheeからスカウト連絡をしたのがきっかけとのこと。
土田 力さん
前職は大手通信会社のグループ企業にて、ECサイトの開発をしていた。Patheeでの現在のメイン業務は、基幹システムのリプレイス。同時にエンジニアチーム全体へのアドバイスや採用支援も担当。
——土田さんはPatheeからスカウトの連絡を貰って転職を決めたとのことだったのですが、なぜその方法で会社を決めたのでしょうか?
——Patheeとの面談で、印象に残っていることはありますか?
お話を聞いていると「やりたいことはいくらでもある、ただ今は時間がないだけ」という印象だったので、自分が手を上げればできる環境なんだろうな、と。
——それで、面白そうだなと思ったんですね。条件面で転職先に求めていたことはありましたか?
——コーヒーマシン……?
採用担当・原嶋さんに聞いてみよう
——先ほどお話を伺った齊藤さんとは違い、土田さんはシニアエンジニアとして採用されたとのことですが、当時の印象はどうでしたか。
——人事としては、「掘り出し物を見つけた」といった感覚でしょうか。
——採用には、どれくらいの費用がかかったのでしょうか?
——話を聞く限り、かなりの額がかかっていることになりますが……。
——参考にならないくらい稀なケース、ということですね。
ダイレクトリクルーティングの場合
・ 他チャネルでは見つからない層にアプローチできることが強み
・ 結果的に、コストが抑えられるケースもある
・ 土田さんの採用は、奇跡
——そういえば、土田さんの数少ない条件だったコーヒーメーカーは設置できたのでしょうか?
——採用戦略のお話も勉強になりました。ありがとうございます!
採用理由がわかれば、目標も見えてくる?
求人活動の手段がたくさんあれば、その方法ごとの苦労や工夫が必要なポイントもさまざま。マツリカ、Pathee両企業でも、採用にあたってたくさんの工夫がされていました。
採用は、会社の戦略の一部。会社が今後目指している方向性や、新しい社員に求めていること、採用に至った経緯まで、1人の社員を採用する背景には、会社や人事側によるそれぞれの目的があるんですね。
会社勤めをしている皆さんが「今の会社に採用された理由」はいったどんなものでしょうか。改めて考えてみたら、自分のやるべきことが少しだけクリアに見えてくるかも……?
品川区が提供しているエンジニア採用の助成金は、2020(令和2)年4月1日から改めて募集をスタートします。採用時の手間やコストに頭を悩ませている品川区内企業の人事担当者さんは、申請を検討してみてはいかがでしょうか?
詳しくは、品川区Webサイト、もしくは品川区の商業・ものづくり課 産業活性化担当へお問い合わせください。
<取材協力>
株式会社マツリカ https://mazrica.com/
東京都品川区東五反田5-28-9 五反田第三花谷ビル 9F
株式会社Pathee https://corp.pathee.com/
東京都品川区西五反田 1-5-1 A-Place五反田駅前4F
(文:伊藤 駿/ノオト 編集・撮影:杉山大祐、水上アユミ/ノオト)