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品川区で起業するメリットは? 五反田バレー×アディッシュ登壇のイベントレポート

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2022年2月にリニューアルオープンした、品川区立の創業支援施設「西大井創業支援センター」。施設愛称を「PORT2401(ポート ニシオオイ)」とし、起業家を対象としたイベントの開催や相談窓口の設置、コワーキングスペースの運営を行っています。

3月14日、同施設で開催されたイベントに一般社団法人五反田バレーの中村代表理事と五反田バレー会員企業のアディッシュ株式会社から小原執行役員経営戦略室長が登壇しました。イベントテーマは「品川区で起業する」です。

五反田エリアのIT企業を統括する一般社団法人五反田バレーと、実際に五反田にオフィスを構えるアディッシュ株式会社は、品川区で起業することに対してそれぞれどのような思いを抱いているのでしょうか。イベントの様子をレポートします。

中村岳人さん(一般社団法人五反田バレー代表理事)

新卒で人事・採用領域のコンサルティング会社に入社。営業を経験後、人材紹介事業の立ち上げを担当。その後、株式会社マツリカの創業期に入社し、インサイドセールスチームの立ち上げやカスタマーサクセスチームのマネジメント、プロダクト広報を担当。マツリカ在籍中に、一般社団法人五反田バレーを立ち上げ、代表理事に就任。株式会社PatheeでBtoB SaaSの立ち上げとCSチームのマネジメントを経験。2021年11月に株式会社Hiwayを設立。Co-Founder COOに就任。

小原良太郎さん(アディッシュ株式会社 執行役員経営戦略室長)

2009年より株式会社オウケイウェイヴにてASPの営業および広告ビジネスに従事。2010年よりMarTech SaaSを提供する株式会社Ptmindの共同創業者としてマーケティングおよび事業提携を担当。2018年11月にアディッシュ株式会社に入社し経営管理部にて戦略を担当した後、2020年4月に同社VP of  Strategyに就任。2021年1月執行役員経営戦略室長に就任。

米澤智子さん(西大井創業支援センターインキュベーションマネージャー)

1985年生まれ、神奈川県出身。中小企業診断士。地方銀行で融資業務に従事した後、総務部門で銀行全体の防災対策企画立案や働き方改革に携わる。2017年より公的機関に勤務、商店街への専門家派遣において約140件の支援に従事。2021年インパクト投資プラットフォームに転じ、SDGs達成を目指す事業の資金調達支援に従事したのち、独立。現在は社会起業家を中心とした小規模事業者の事業計画策定をサポート。

五反田バレーの魅力はコミュニティができること

ファシリテーターは西大井創業支援センターの米澤智子さん

米澤さん
五反田バレーには、正会員と一般会員あわせて100社ほどが参画されていますね。正会員のアディッシュさんが、五反田バレーに加盟してよかったことはなんですか?
いろいろありますが、一番のメリットはイベントに登壇する機会やイベントに参加する機会をいただけることですね。

五反田バレー主催のイベントや、今回のように五反田バレーがゲストで参加するときにアディッシュも呼んでもらうことがあって。イベントを通して当社を知ってもらえますし、自社だけでは出せないPR効果を得られています。
小原さん
まさに五反田バレーの強みはコミュニティができること。一社だけではできないことも、集まることで実現できたりするんです。

僕は先日起業したのですが、会社を立ち上げるときのお金の悩みを五反田バレーで知り合った方に相談しました。ネット上には出てこない創業者の生の声を、顔と名前を知っている関係性だからこそ聞くことができたんです。
中村さん
米澤さん
会社同士、個人同士の繋がりができることが良い影響を生んでいるのですね。お二人は五反田バレーにどんなことを期待していますか?
以前、スタートアップの創業メンバーであったのですが、馬喰横山にオフィスを構えていたタイミングがありました。当時は同じようなスタートアップが同エリアにはなかったので横の繋がりがなく、隣の企業の存在を感じられないのが寂しかった。

一方でそのスタートアップは中国にも拠点を持っていたのですが、中国のシリコンバレーと呼ばれる中関村(チュウカンソン)にあり、別の会社の社員がオフィスを出入りすることがあったり、同じビルのスタートアップが急成長しているという情報もよく耳に入ってきたりしていました。

自社だけでなく、他社の熱も感じながら地域全体で成長していく。五反田バレーもそうなるといいなと思っています。
小原さん

アディッシュ株式会社の小原良太郎さん

もう一つ、五反田の企業間で人材の流動性が高まってほしいです。

会社が成長する過程で求められる人材は変わっていくじゃないですか。例えば起業当初は「物事を生み出すゼロイチ人材」が必要だけど、いずれは「事業をしっかりと回していくという業務設計することが得意な人材」が必要になる。

会社が軌道に乗ったらゼロイチ人材は会社を離れて、別の会社でまた一から新しいイノベーションを生み出し、業務設計が得意な人材は業務が固定化したら会社を離れて、培ってきたスキルを別の会社で生かす……。そういったサイクルが五反田ならできそうだな、と。
小原さん
僕は五反田バレー加盟企業の中で転職した経験があります。会社は従業員に長く働いてもらいたいと思う一方で、成長フェーズにミスマッチな人が無理して残っている現状もある。社員が積極的に合う環境に移動するという選択が自然になればいいですね。

同じエリアの会社に転職すると、周りから「引き抜かれたのか」と聞かれることもあるし、会社も「愛想つかされた」と感じるかもしれない。でも実際に転職した側の視点から見ると、会社が自分を必要なフェーズを超えたから卒業して、そのスキルを今度は違う会社に還元しようと考えているだけなんです。人材が循環することに対して、企業同士がもっとオープンに話せるようになれば、五反田の企業全体の底上げにもつながるはずです。
中村さん

品川区が起業に向いている理由

米澤さん
なぜ品川区、特に五反田にスタートアップが集まるのだと思いますか?
おそらくコストが低くて、利便性が高いからですね。そこに目をつけたスタートアップが集まってきて、それぞれが成長し始めたことで「お、五反田盛り上がっているじゃん」と世間に認知されてきたのだと思います。

今では五反田の不動産も埋まり、「せめて五反田近辺でオフィスを」と考える企業も増えて、品川広域にスタートアップのエリアが広がっています。ここ西大井も五反田バレーだと思っています(笑)。
中村さん

一般社団法人五反田バレー代表理事の中村岳人さん

あとは丸の内に比べて、生活コストが抑えられる。丸の内であれば、打ち合わせやランチで外食したら握りこぶしぐらいの量しかないパスタが1500円するじゃないですか(笑)。

でも五反田は、お昼ごはんも飲み会もお財布に優しい。ちょっと調べたら雰囲気のいいお店もある。そんな理由で企業が定着しているんじゃないかな、と。
中村さん
五反田近辺には商店街があるエリアも多いので、住むのにも適しているんですよね。実際に私も西大井に住んでいたことがありますし。当社の従業員でも西大井に住んでいる者は多いです。

起業したら毎日忙しくなるので、会社の近くに住むことができると通勤のストレスが減る。これは意外と大きなメリットです。
小原さん
米澤さん
スタートアップの課題を、品川区で起業することで解決できるのでしょうか? またその理由もあわせて教えてください。
スタートアップを経営する中で、いろんな情報が必要になります。品川区は、同じような領域やフェーズの企業が集まっていることで、情報交換できる場としてぴったりです。

起業したばかりの頃は何でも自分でやってしまいがちだけど、比較対象がないとその行動がよいのかわからない。近い立場の会社の話を聞くことはよりよい行動をするための近道で、これは成長に重要だと思います。
小原さん
事業を軌道に乗せるには、プロダクトの価値を知ってもらうための実績が必要です。例えば、「田舎のお酒メーカーがIT化しました」というニュースは目を引きやすいですよね。いろんなスタートアップがこういった事例を作りたいと考えていて、昔からある産業もIT化したいと思っているのに、それをスタートアップだけの力で実現するのは難しい。

品川区は以前から、商店街に五反田バレー会員企業のITツールを導入する支援をしていて、スタートアップの実績づくりを後押ししてくれています。そういう意味でも、品川区に会社を構えるのはチャンスだと思います。
中村さん
米澤さん
西大井創業支援センターは起業を目指す人が集まる場所です。最後にお二人から起業を目指す人たちに一言あればお願いします。
僕は起業したばかりなので、何か言える立場ではないのですが……。起業した側としては、早く悩みを相談できる仲間を見つけたいので、参加者の皆さんどうぞよろしくお願いします(笑)。
中村さん
私が前の会社を起業したのが2010年で、スマートフォンが一般化するにつれスマートフォン関連のスタートアップが急増していた時期でした。当時は3000万円を資金調達したというと「すげ〜」となっていた時代ですが、今ではそんな例も珍しくなく、起業しやすくなっていると思います。

起業した当時を振り返ると……お金はすぐになくなっちゃうし、本当に辛かった(笑)。でもそういう経験ができるのが起業の醍醐味で、得られた知識はその後も役立っています。一回失敗したらダメという時代ではないので、起業する方々にはできる限りチャレンジしてほしいです。
小原さん

イベント参加者の中には、お二人の話をうなずきながら聞き、メモをとる姿も見られました。今後、品川区ではどんな新しいビジネスが生まれ、どれほど多くの起業家が誕生するのでしょうか。

品川区で起業を考えている方は、今回のイベントの主催者であり、イベント会場にもなった「西大井創業支援センター」にぜひ足を運んでみてくださいね。

 

取材・文・編集/ノオト

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