2020年2月5日、品川区東五反田にあるオープンイノベーション・共創を実現するスペースInnovation Space DEJIMAで「GOTANDA-VALLEY 2020活動発表&ビジネスマッチング」が開かれた。
本イベントは、五反田バレーに参画する企業と、マッチングを希望する大手企業が直接コミュニケーションを取る機会の提供が主な目的。
2018 年の五反田バレー設立時、会員企業やその取組についてさまざまな会社から問い合わせがあったものの、設立間もないがゆえのリソース不足により、それらへの対応が遅れてしまっていた。そこで、問い合わせ窓口を介さずに企業同士が直接交流を持ち、今後の協業につなげることを目標とし、開催されたのが今回のイベントである。
イベントには、協業パートナーを探す大手企業11社と五反田バレーに参画する15社、その他は自治体など8の団体が参加。が参加。参加各社によるプレゼンテーションや交流タイムを通して、企業同士に限らず、個々人の間でも新しいつながりが生まれた。記事では、2時間を超えるイベントの様子をダイジェストでお届け。
「五反田の時代、まだ来ていないかも」 本イベントで活性化を図る
イベントは、開催日直前の2月1日にテレビ東京系列で放送された『出没! アド街ック天国』に関する話題から幕を開けた。東京を中心に一つの街・エリアを取り上げる同番組だが、その放送回のテーマは「五反田」だった。
現在の五反田の変化を象徴するものとして、「五反田バレー」は番組内のランキング1位を受賞。多くの参加者がリアルタイムで放送を見守っていたとのこと。
「アド街を見た方?」と呼びかけたところ、半数以上の参加者が挙手をする結果に
番組中で、五反田バレーを代表してコメント出演を果たしたのはPathee(パシー)の中村岳人さん。「五反田バレー設立時から、『アド街ック天国』に出るのが夢と理事企業と語り合ってきた。まさか2年経らずで実現できるとは」と喜びを語った。
大手企業と五反田バレー会員企業のコラボレーションについては、少しずつ動きが見え始めているものの、協業の前例はまだまだ少ない。中村さんは、「番組では『五反田の時代が来た』とコメントしたが、設立時に企業から問い合わせをいただいても、すべてに対応できなかったのが実情。まだ五反田の時代は来ていないかもしれない(笑)。今回のイベントを機に、マッチングの活性化を図りたい」と呼び掛けた。
五反田バレーの顔としてテレビ出演した中村さん。同僚からはよくからかわれているとのこと
「隣にいる企業が出資元だった」地域で広がる仕事の縁
プレゼンテーションやビジネスマッチングの時間に先立ち、まずは大手企業側、五反田バレー参画企業側の各社が自己紹介を行い、事業内容や本イベントへの参加目的を述べた。
大手企業側には、東京都庁や品川区役所などの自治体、全国にコンビニエンスストアを展開するローソン、大日本印刷、日本郵政不動産など本社や支社が五反田もしくは品川エリアにある企業が参加。大日本印刷は、「新しい仕事を考えなくてはならない時代がやってきた。オープンイノベーションを進めているけれど、なかなか想像できていないのが実情。力を借りて一緒に変わりたい」と五反田バレー参画企業とのコラボレーションに期待を寄せた。
交流会に向けて、大手企業側は青色・五反田バレー側は赤色のネックストラップが配布された
品川区役所からは、2020年に開催を控えるオリンピックと絡め、目黒川で舟運事業を実施したいという相談も。「五反田と天王洲を結ぶ舟運による社会実験でぜひコラボしたい」と、五反田ならではの事業提案を呼び掛けた。
自己紹介で、ゆうぽうと跡地を再開発する「五反田計画」に触れたのは、同開発計画を進める日本郵政不動産。開発計画が五反田バレーの運営する当Webサイトと同じ名前になってしまったことについて、「同じ名前だが、偶然です。名前を借りたわけではない」とユーモアを見せた。
対する五反田バレー参加企業は、ビジネス支援ツールやCtoCのWebサービス、AIを活用に特化した各種サービス等、提供している自社サービスの説明に時間を割きつつ、自己紹介をする参加者が多く見受けられた。
シニアの終活サービス「お坊さん便」などを提供するよりそうは、「自己紹介を聞いて、自分のすぐ隣に、出資してくれている企業の方が座っていることがわかり、身が引き締まる思い」と話し、笑いを誘った。
職業を通した結びつき 企業同士のマッチングだけでなく勉強会へも発展か
イベント後半は、参加企業のうち希望した数社がプレゼンテーションを行った。
大手企業側には、自社事業にIoT 技術の導入を進めており、新しい取り組みを進めるためIT技術に特化したパートナーを探す企業が多く見受けられた。
そのなかでも会場の注目を集めたのが、コンビニチェーンを経営するローソン。昨年の実績として同社で販売する「バスチー」を「コンビニスイーツ界に激震が走ったスイーツ」、「悪魔のおにぎり」を「売上1位を誇っていたシーチキンマヨネーズを抜いたおにぎり」など、クイズ形式で紹介した。
プレゼンテーションでは、「コンビニは40年以上同じビジネス。世界の人々の要望を受け、増やし続けている反面、人手不足が深刻に。展開期を迎えている」と現状の課題を示したうえで、未来のコンビニを研究するラボ「オープンイノベーションセンター」では、コンビニや社会の課題を、テクノロジーを使って解決しようとしていると説明。
「組織にいるからこそ保有する知見やデータがある。まずはオープンイノベーションセンターへ気軽に遊びに来てほしい。目の前の課題を解決するだけでなく、社会をもっと素敵な未来にするための新しいビジネスモデルを考えたい」と呼び掛けた。
一方、五反田バレー参画企業からは AI 技術を活用したプロダクトや人材サービスの紹介など、事業説明を行う企業が目立った。中でもAIに関わる人材確保の重要性を指摘したのは、IoTプラットフォームの開発を行うXSHELL(エクシェル)。自社を「学ぶことを楽しむ会社。経営陣も全員エンジニアで技術オタクが集まっている」と紹介した。
XSHELLがデアゴスティーニと提携・発売している『本気で学ぶIoT』、その創刊号はなんと2万円。金額のインパクトに、会場がざわめいた
「今の日本に求められるのは、顧客の課題を受託して解決するのではなく、自分で課題を解決できるようになること。そのための『武器』を手にしないといけない」と理念を語った同社。近年の調査データを取り上げ、AIに携わる人材の取り合いが世界中で起きていると状況を訴えた。
「日本企業はAIに関わる人材の年収を引き上げる必要性があって、そのためにまずはAIをどう学べばいいのかを考えなければいけない」と話し、今回の制作キットがビジネスに結びついた経緯を語った。制作キットを通して「エンジニアはGoogleが発表する最先端のAIを社内で実装できるレベルに成長でき、非エンジニアは、AIを使ったビジネスモデルを構築する勘所がつかめるようになる」とのこと。
ほかにも、映像に関して独自の観点で商品提案を行うsafieが力強く自社サービスを語った。「HPのキャッチコピーは『キレイ・かんたん・使いやすい防犯カメラのクラウドサービス』。AIの時代は、AIを賢くするデータを持つ企業が生き残ると信じている。人間の脳は目から取り入れたデータをもとにどんどん賢くなっている。AIにとっての目は、カメラであり、賢くするには映像データが必要。その映像データを日本で一番持っている会社になりたい」と呼びかけた。
企業によるプレゼンが行われる中、会場後方ではイベントに参加した企業による交流が盛んに行われた。異なった職業間でも話が盛り上がり、「エンジニアの経験がない上司との意思疎通の図り方」といった、業務提携とは直接つながらない雑談で会話を弾ませる団体も。
最終的には、今後の勉強会の提案や課題感の共有が図られ、「一度、会社に遊びに来てほしい」と声を掛け合いながら、イベントは幕を下ろした。
結果として終了予定時刻をオーバーする盛り上がりを見せた本イベント。今回の出会いをきっかけに、大手企業と五反田バレー参画企業の間で、新しいイノベーションが起きる未来に期待したい。
(文:ゆきどっぐ 編集:伊藤駿/ノオト)