五反田バレー、品川区、株式会社マイナビ共催の「五反田バレー×ベンチャーmeetup Online Seminar」が7月30日に開催されました。就職活動を行う学生を対象に、五反田バレー企業やベンチャー企業の魅力を知ってもらうイベントです。
第一部ではfreee株式会社の佐々木さん、セーフィー株式会社の佐渡島さんによる社長パネルディスカッションが実現。現代におけるベンチャー企業の立ち位置や、働く魅力について語りました。
freee株式会社 CEO
佐々木大輔さん
「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに、中小企業・個人事業主向けの統合型経営プラットフォームを開発・提供するfreee株式会社を2012年に起業。好きな言葉は「マジ価値」。これは、同社が大切にしている「ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする」という価値基準。
セーフィー株式会社 代表取締役社長CEO
佐渡島隆平さん
「映像から未来をつくる」をビジョンに掲げ、クラウド録画型映像プラットフォームの開発・運営を行う。2014年にセーフィー株式会社を設立。「見える未来文化研究所」の発足や、Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング2021」にて1位に選出されるなど、精力的に事業を推進している。
マイナビ編集部
星山浩伸さん
品川区・五反田バレーとともに本イベントを共催する株式会社マイナビで、数多くのオンラインセミナーを主催する。パネルディスカッションの司会・進行を担当。
学生の頃は、キャリアなんてイメージできていなかった――二人が起業に至るまで
まず、自己紹介も兼ねて、学生時代から起業までの経歴をお聞かせください。
僕は実家が美容院だったので、家の跡を継ごうと思っていました。ですが高校2年生の終わりに、木村拓哉さん主演の「ビューティフルライフ~ふたりでいた日々~」というドラマがきっかけで空前の美容師ブームが起こったんです。美容師になりたい人が大勢いるこのタイミングで美容師になるのは得策じゃないなと、新しい道を模索することに。データ分析や統計が好きだったので、それに関する勉強や、スタートアップでのインターンを経験しました。新卒で博報堂に入社後、いくつかの会社を経験して、freeeを起業しました。
僕は中学生の頃から、インターネットで新しいこと・面白いことをしてみたいと思っていました。それから学校に行くのが大嫌いで……どうやって学校をサボるかというのを定期的に考えていました(笑)。そんな中で「テスト前のノートがほしい」と思ったので、学生たちへビラを巻いて、何万人もの学生が情報を共有するWebサイトを作ったんです。講義の情報のほか、地元のお店にアルバイトの募集かけてあげたり、メールで休講情報を配信してあげたりと、様々なサービスをやっていました。
学生時代にサービスを立ち上げたのですね!
でも実際に一人で続けていくのは大変だし、社会に出てお金を稼ぐ経験もしたいと思って、就職することにしました。ソネット株式会社(現:ソニーネットワークコミュニケーションズ)に入社し、様々なサービス事業に携わりました。その後、ソニーの研究所が独立して出来たモーションポートレートへ転籍し、一緒に働いていた2人のエンジニアと起業。今に至ります。
お二人は、いつの段階から本格的に起業を考え始めたのですか?
発端は、僕がGoogleで働き始めて5年弱の頃、オランダ人の上司に「日本人は働きすぎだ」と言われて取った長期休暇のなかで、自分の働き方について振り返ったことでした。
Googleでは、中小企業のインターネットの広告主を増やす仕事をしていました。当時、中小企業の皆さんはGoogleに広告を載せられることを知らなかったんです。自分たちのマーケティング活動通じて、中小企業の人が新しいビジネスが出来るようになっていく。世の中に対して意義があることをしている、というのを初めて実感して。
そのようなやりがいを感じる一方、広告以外の部分では中小企業にアプローチできていないことにもどかしさを感じていました。そうやって仕事する中での長期休みで、これまで意義のための仕事だと思っていたけど、実際のところは何もできていないな、そういうことを思い始めたのがきっかけでした。
Googleでは、中小企業のインターネットの広告主を増やす仕事をしていました。当時、中小企業の皆さんはGoogleに広告を載せられることを知らなかったんです。自分たちのマーケティング活動通じて、中小企業の人が新しいビジネスが出来るようになっていく。世の中に対して意義があることをしている、というのを初めて実感して。
そのようなやりがいを感じる一方、広告以外の部分では中小企業にアプローチできていないことにもどかしさを感じていました。そうやって仕事する中での長期休みで、これまで意義のための仕事だと思っていたけど、実際のところは何もできていないな、そういうことを思い始めたのがきっかけでした。
佐渡島さんは、学生の頃から起業が念頭にあったのかなと感じましたが、いかがですか?
実家に自営業の人間が多かったので、自分で事業をやってお金を稼ぐということに対しては、違和感はなかったですね。
じゃあ、ソネットに入社されたときから将来は起業するぞという気持ちはあった?
いや、それがもう全然なかったんです。ソニーグループにはエンタメをやる人、半導体を開発する人、ファイナンスを担当する人……と面白い人がたくさんいて。とにかく色んな人と話して、ビジネスをつくるのが面白かった。新しい人との出会いを大事にしながら、ビジネスを自分なりにつくってみようという思いで働いていました。
ベンチャーなら、スピード感を持って社会を変えていける
では、魅力的な環境で働いていたにも関わらず、起業を決意した理由はなんでしょう。
起業前に働いていたモーションポートレートでは、AIを活用したサービスを考えていたんですね。
ちょうど僕が家を建てたタイミングでもあって、防犯カメラを探していたんです。でも、買ったときは性能が良くても、あとは劣化していくだけの商品しかなくて……。AIの力で勝手に賢くなっていくカメラがあったら、みんな欲しいんじゃない?と思って。その時、うしろの席にエンジニアが2人座っていたので、その2人を説得して仲間に入ってもらいました。
もともと社内でやろうとしていたのですが、大手メーカーでやると、決裁にすごく時間がかかる。また、競合の関係で手を組める企業にも制限が出てくる。じゃあ、オープンな世界のほうが早いし割に合うんじゃね?という話になって。
ちょうど僕が家を建てたタイミングでもあって、防犯カメラを探していたんです。でも、買ったときは性能が良くても、あとは劣化していくだけの商品しかなくて……。AIの力で勝手に賢くなっていくカメラがあったら、みんな欲しいんじゃない?と思って。その時、うしろの席にエンジニアが2人座っていたので、その2人を説得して仲間に入ってもらいました。
もともと社内でやろうとしていたのですが、大手メーカーでやると、決裁にすごく時間がかかる。また、競合の関係で手を組める企業にも制限が出てくる。じゃあ、オープンな世界のほうが早いし割に合うんじゃね?という話になって。
スピード感を気にして、ということだったんですね。決裁が多い、というのは大手ならではですか。
そうですね。ソニーさんは今もお付き合いはあって大好きなんですけど、やはりスピードを考えたら、3人でやったほうが早い。
ありがとうございます。佐々木さんは意義のある仕事が出来ていないことを課題としていたそうですが、具体的にはどのようなことを考えていたんでしょう。
Googleでの仕事でインターネット広告自体は広まっていきましたが、中小企業の経営の根幹をテクノロジーに置き換えていかないと、根本的には何も変わらないというのを課題に感じていました。それを突き詰めて考えていった時に、会計ソフトに思い至って。
調べてみると、なんと会計ソフト業界は30年間なにも変わっていない。つまり、会計や経理は一番保守的な領域。そんな中で経理がクラウド上の会計ソフトで自動運用できるようになれば、中小企業のテクノロジーの中で置いていかれているところが変わるので、世の中を底上げできる変化が起こせそうだと思いました。
また、クラウド会計ソフトをみんなが使うようになれば、企業と企業の取引の仕方自体も変わっていくだろうし、データが蓄積されればAIのCFOのような存在があらゆるビジネスを良い方向に導けるんじゃないかと。そこにすごくワクワクしました。
調べてみると、なんと会計ソフト業界は30年間なにも変わっていない。つまり、会計や経理は一番保守的な領域。そんな中で経理がクラウド上の会計ソフトで自動運用できるようになれば、中小企業のテクノロジーの中で置いていかれているところが変わるので、世の中を底上げできる変化が起こせそうだと思いました。
また、クラウド会計ソフトをみんなが使うようになれば、企業と企業の取引の仕方自体も変わっていくだろうし、データが蓄積されればAIのCFOのような存在があらゆるビジネスを良い方向に導けるんじゃないかと。そこにすごくワクワクしました。
なるほど。では、当初目標にしていた会社の姿と、現在はどうなのかというところをお伺いしてもいいですか?
70〜80年代の日本企業の強みは、すでに世界中の起業経営手法に完全に取り込まれて、その上に新しいものが築かれていっています。でも、日本の大企業は新しい手法に対して「それは日本では当てはまらない、うまくいかない」と決めつけてしまいがちなんです。リスクを恐れて、イノベーションを阻害してしまうシチュエーションが、日本には数多くある。
だからこそ僕がやりたかったのは、世界中で良いと言われているものは積極的に取り入れて、その上に自分たちの良さを載せていくこと。自社独自のところと、世の中の変化と向き合うことのバランスをとるというのは、今のところできているかなと思いますね。
だからこそ僕がやりたかったのは、世界中で良いと言われているものは積極的に取り入れて、その上に自分たちの良さを載せていくこと。自社独自のところと、世の中の変化と向き合うことのバランスをとるというのは、今のところできているかなと思いますね。
ありがとうございます。では佐渡島さんはどうでしたか? 当初こんな会社にしたいと思っていた姿と、現在どうなっているかというところで。
映像価値を使って、あらゆる社会がデータをリアルタイムに参照していく、映像分野で一番のビックデータを持った会社を作ろうというのを、設立当初から目標にしています。弊社には「異才一体」というカルチャーがあるんですけども、あらゆる才能の人が一体となって、変化に対応していくというのがすごく重要だと思っていて。世界で勝てる会社にしていく段階はこれからですが、今ここで聞いてくれている学生のみなさんと作っていきたいなと。
スタートアップ出身者の技術が求められることも。世の中の変化にも注目
転職が当たり前になってくる時代ですが、昔から「大手は中途採用で入れないけど、ベンチャーは中途採用で入れる」という言葉をよく聞きます。そういう言葉に対してはどのようにお考えですか?
大企業は新卒じゃなきゃ入れない、ベンチャーは中途でも入れるという主張は、むしろものによっては逆になってきているところもあるんです。たとえばデジタル庁では、最新の技術を持つスタートアップの人たちのニーズが高いんですよね。日本にこれまでなかった職種が、スタートアップからどんどん生まれている。そういった職種を大企業でつくりたいとなれば、スタートアップから中途採用するしか無い、こういう流れは着実に生まれてきています。
では、ファーストキャリアで選ぶ環境としておすすめなのはどのような企業でしょう。
大企業にやりたいことがあれば価値があると思うし、逆に無いのなら自分の力にそれほどならないと思うので、やりたいことがある企業を選ぶのが良いんじゃないかなと。
打席に立てる数は重要ですよね。見習いをずっとやるのか、裁量を持てるのか、どれくらいのスピード感で成長が求められるのかとか。
多くの企業の下地には、戦後高度経済成長期に植え付けられた、超リスク回避型の日本カルチャーがある。そうしたカルチャーに染まった人が増えると、さらにイノベーション嫌いが日本全体に充満していって、より社会が停滞してしまう。そういう意味でもやっぱりどれだけ建設的に新しいことに取り組める環境なのかは重要だなと。
多くの企業の下地には、戦後高度経済成長期に植え付けられた、超リスク回避型の日本カルチャーがある。そうしたカルチャーに染まった人が増えると、さらにイノベーション嫌いが日本全体に充満していって、より社会が停滞してしまう。そういう意味でもやっぱりどれだけ建設的に新しいことに取り組める環境なのかは重要だなと。
ベンチャー企業は、とにかく新しい価値をスピード感持って打ち出していくことができます。変化に素早く対応できるスタートアップが社会全体を変えるという現象が、アメリカや中国では起きているんですね。でも、日本はまだ変えられていない。時価総額ランキングなどの上位にスタートアップがたくさん入ってくるような社会を作っていければ、「大手に入るより、起業するほうが割に合うよね」という新しい価値観が生まれるのかなと。そういう時代が目の前まで来ているのですが、まだ提供できていないというのはスタートアップ企業の課題ではあります。
実際のところ会社ではどんな人が活躍していますか?
1つの成功の裏側には、8つ9つの失敗が介在しています。失敗を乗り越えながら成功していくものなので、普段は失敗の連続なんです。だから、成功して笑うのは当たり前なんですけど、失敗しても面白がれる人。
2つ目はアンラーニングできる人。変化の激しい世の中、自分たちが今持っている知識を活かすという前提ではなくて、お客様に向き合った事実に基づいて考えられる人です。
3つ目は誠実さ、4つ目はチームで何かを作っていく力がある人。そして、いずれにも共感力は不可欠です。ここでいう共感とは、自分自身の気持ちと仲間の気持ちの、お互いに重なっている部分を大事にしていくということです。それを感じられている人は成長していくなと思います。
2つ目はアンラーニングできる人。変化の激しい世の中、自分たちが今持っている知識を活かすという前提ではなくて、お客様に向き合った事実に基づいて考えられる人です。
3つ目は誠実さ、4つ目はチームで何かを作っていく力がある人。そして、いずれにも共感力は不可欠です。ここでいう共感とは、自分自身の気持ちと仲間の気持ちの、お互いに重なっている部分を大事にしていくということです。それを感じられている人は成長していくなと思います。
重要なのはスキルばかりではないということですね。活躍している人の特性について、佐々木さんはなにかありますか?
ムーブメントを起こせる人がより一段活躍しています。ムーブメントとは、社会運動みたいなことです。freeeは自分たちのことをムーブメント型の組織だと言っていて。指示されて働くんじゃなくて、社内でムーブメントが巻き起こり、それが広がっていく。
では、ムーブメントをどうやって起こすのかというと、色んなパターンがあって。コミュニケーションが上手な人に、みんながついて行くっていうのもあるし、超口下手だけど文章書かせると天才的な人を見て、みんながついて行くというのもあるし。いろんなやり方でムーブメントを起こす社員がいるというのが一つの特徴かなと思います。
では、ムーブメントをどうやって起こすのかというと、色んなパターンがあって。コミュニケーションが上手な人に、みんながついて行くっていうのもあるし、超口下手だけど文章書かせると天才的な人を見て、みんながついて行くというのもあるし。いろんなやり方でムーブメントを起こす社員がいるというのが一つの特徴かなと思います。
ありがとうございます。最後に、新卒採用に絡めつつ、学生の皆さんにメッセージを一言ずついただければ。
我々は世界で成功していくために、常に手法をアップデートしていきたいという思いがあります。学生さんには、「自分が会社を変えてやるんだ」と思って入ってきていただきたいです。必ず変えていけるし、その変化がプロダクト、そしてお客様につながって社会に貢献する。その先には時代をつくっていくということにもなり得る。それがスタートアップの価値だと思います。
人生は長いので、新卒の就職活動がこの世の終わりではないと思うんですよね。だから、入って嫌だったらやめればいいし……くらいの気持ちで良いんじゃないかな。今は自分らしく生きられる時代だと思うので。世の中の変化も意識しつつ、自分が面白いと思える会社を見つけてください。
文・編集/ノオト