ビジネス街のイメージが強い五反田で今、フィンランド発祥のスポーツ「モルック」が熱いのをご存知でしょうか?
2023年2月に開催された「五反田モルック大会2023」。24チームの参加枠に対し、なんと100件を超える応募があったそうで、その盛り上がりを伺い知ることができます。
しかし、「そもそもモルックって何?」「なんで五反田で?」と思っている人も多くいるはず。
今回は、「五反田モルック大会2023」を企画・運営した「五反田モルック協会」の都留沙織さん、髙森瑛菜さん、橋場和行さんの3人に、競技の魅力や大会の様子についてお話を聞きました。
そもそもモルックってどんなスポーツ?
モルックは、フィンランド・カレリア地方の伝統的なゲームkyykkä(キイッカ)を元に、1996年にLahden Paikka社が開発したアウトドアスポーツです。
モルック(手前左)とスキットル(手前右)(提供写真=五反田モルック協会)
木製の棒(モルック)を3~4メートル離れた場所から、1から12までの数字を記した木製ピン(スキットル)に投げ、倒したスキットルの内容によって得点を加算。先にジャスト50点を取った方が勝ちというルールです。
スキットルを複数本倒した場合は倒した本数が、1本のみ倒すとその倒したスキットルに書かれた数字が得点になります。50点を超えてしまうと点数が25点に戻り、3回連続でモルックがスキットルに当たらなければ、0点になり失格となります。
日本では2011年に日本モルック協会が設立され、2014年から日本大会が開催されています。
五反田とモルックと、「さらば青春の光」
「さらば青春の光」メンバーの森田哲矢さん(左)、東ブクロさん(提供写真=さらばBAR)
五反田は、お笑いコンビ「さらば青春の光」メンバーの森田哲矢さんが社長を務める芸能事務所「ザ・森東」や、同コンビがオーナーの「さらばBAR 五反田店」があるなど、森田さんの活動拠点となっています。
森田さんは2018年にテレビ番組をきっかけにモルックと出合い、その後、日本代表チーム「キングオブモルック」としてモルック世界大会に二度出場したり、2021年から日本モルック協会の公式アンバサダーに就任したり、日本でのモルックの普及に力を入れています。
2018年時点でのモルックの競技人口は約1,000人ほどだったそうですが、森田さんの活動をきっかけに、2020年時点で推定10,000人まで増加したのだとか……!
そんな森田さんの影響力が、五反田の企業にも伝播していきます。
部活から五反田モルック協会へ! 魅力は手軽さと戦略性
「わが社の代表がモルックを大量購入してきたことをきっかけに、同好会を経て2020年7月に社内部活としてモルック部が発足しました」と話すのは、株式会社ヴィクサスの社員で、五反田モルック協会広報担当の都留沙織さん。森田さんがモルックをやっているという記事を読み、代表の方が「社内で事業部対抗戦をやりたい」とすぐさまモルック8セットを買ったそうです。
モルック部練習風景(提供写真=五反田モルック協会)
「月に1回、部活メンバーや内定者、ネットで募った地域の方などとモルックの練習をしていたところ、外部を巻き込んで大会を開催してみたいと思い、大会運営のために協会を立ち上げることになりました」(都留さん)
そうして2021年、人材派遣やセールスプロモーション業を手がける株式会社ヴィクサスを中心に、モバイル機器販売の店舗運営を行う株式会社ヴィックスコミュニケーションズ 、ITアウトソーシングやシステム開発などを展開する株式会社ヴィックスエイジが共同で五反田モルック協会を設立します。
五反田モルック協会の橋場和行さん(上段)、髙森瑛菜さん(下段左)、都留沙織さん。みんなで五反田の「五」のポーズ
都留さんによると、「モルックは、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層でプレーができ、道具さえあれば仕事終わりに公園で楽しめる手軽さも魅力ですね」とのことです。
「50点を超えると点数が25点に戻り再スタートになるなど、プレー次第で大逆転もありえるゲーム性が醍醐味。戦略を立てる際に会話が生まれるなど、モルックをきっかけにコミュニケーションを取れるのも良い点だと思います」と同協会広報担当の髙森瑛菜さんも話します。
「モルックで五反田を元気に。」大会の開催で地域活性を目指す
五反田モルック大会は、モルックを五反田の公式スポーツとし、競技の普及や地域活性化を目的に企画されました。五反田はベンチャー・スタートアップ企業が集積していることから「五反田バレー」と呼ばれています。そんな企業間でのコミュニティ形成や健康経営などを、モルックを通じて促進していくという思いが「モルックで五反田を元気に。」という大会コンセプトに込められているのだとか。そのため、一般社団法人五反田バレーをはじめ、五反田の周辺企業や飲食店などを巻き込んで大会運営をすすめているそうです。
大会の目玉の一つとして、さらば青春の光の森田さんがスペシャルゲストとして参加するイベントも。森田さんが五反田商店街振興組合のPR大使を務めていた縁で、同組合理事の鶴井正博さんを通じて参加が実現したとのことです。五反田だからできた大会内容になっていますね。
本来は2021年3月14日に初開催の予定でしたが、国からの新型コロナウイルス感染症対策による緊急事態宣言を受け、2度の延期の末に中止になっていました。
前大会ポスターと五反田モルック協会広報担当の都留さん(左)、南畑蛍さん
(提供写真=五反田モルック協会)
都留さんは「開催直前での延期・中止は、状況的に仕方なかったとはいえ、落ち込む出来事でした。しかし、参加予定だった人々から励ましてもらい、2年越しの開催を目指しました」と話します。
ついに初開催! 初代五反田モルックチャンピオンVS日本代表チームも
そうしてついに初開催された「五反田モルック大会2023」。2月26日(日)に品川区立日野学園グラウンドで行われました。約100件の応募から抽選で選ばれた五反田周辺の企業・団体24チーム(1チーム3人)が出場。チームの顔ぶれは、競技歴5年以上のベテランから初心者まで様々でした。
総得点数による勝ち抜き戦の予選と、2セット先取の決勝で「初代五反田モルックチャンピオン」が決まります。見事、優勝に輝いたのは「五反田Little A(リトル アー)チーム」! ビーチバレーのチームの中から、五反田にゆかりのあるメンバーが集まって結成したのだそうです。
「五反田Little A」(前列の3人)と「キングオブモルック」。金のスキットルに見立てた優勝トロフィーが授与されました(提供写真=五反田モルック協会)
決勝後に、森田さんのほか、日本代表チーム「キングオブモルック」メンバーでお笑い芸人のみなみかわさんとカナイさんもサプライズで登場し、優勝チームとのエキシビションマッチが実施されました。軽快なトークで会場を盛り上げながらも、日本代表の実力を遺憾なく発揮し、「キングオブモルック」の勝利で大会は終了。
エキシビションマッチの様子(提供写真=五反田モルック協会)
そのほか会場では、日本ユニバーサルモルック協会会長の山口順さんによる小中学生向けのモルック体験会も実施されていました。小学校低学年の子どもたち10人ほどが体験し、和やかな雰囲気だったといいます。
「本業でのイベント運営の経験のおかげで、大きな問題もなく大会進行が出来ました。アンケートでは満足したという声が多く、初開催ながら上手くいったと思います」と都留さん。「一方で、『土のグラウンドでプレーしたかった』という要望や、参加企業同士の交流があまり出来ていないという印象もあったため、改善点も感じました」と振り返ります。
大会終了後に記念撮影(提供写真=五反田モルック協会)
協会の活動や大会の今後について、「コロナ禍で機会が減っていた練習会なども復活させ、モルックを通じた企業同士のコミュニケーションを取れる場を大会以外にも増やしていきたいです」と高森さん。
橋場さんは「モルック大会の第2回は7月を予定しており、今後はシーズン毎に開催していけたらと思います。また、通常の大会だけでなく学生や高齢者限定の大会なども開催し、参加者と企業をつなげることでモルックを通じた採用活動にも結び付けていきたいです」と話します。
今後もますます盛り上がっていきそうなモルック。モルックが正式に五反田の公式スポーツとなる日も来るのかもしれません。最後に、モルックが気になっている人たちに向けてメッセージをお願いしました。
「まずはやりましょう! 五反田モルック協会が開催している練習会はゆるやかな雰囲気で、初心者でも歓迎です。私達もヘタクソですが(笑)、楽しくやっています」(都留さん)
五反田モルック協会が開催している練習会、大会の詳細については、五反田モルック協会公式サイトまたはTwitterをチェックしてください。
文=西村重樹/編集=ノオト