スタートアップや起業家の事業成長を支援する「五反田バレーアクセラレーションプログラム」。3期生の半年間にわたる研修の集大成となる「Demo-Day」が2023年3月17日、大崎ブライトコアホールで開催されました。
当日は、受講者15名がそれぞれのビジネスプランをピッチ形式で発表。イベント終了後は受講生同士や先輩起業家と交流する機会も設けられました。
半年間のプログラムを終え、受講者はどのような成果を得られたのでしょうか。3回目の「Demo-Day」の様子をレポートします!
地域の未来、スタートアップの力に期待
品川区地域振興部部長の伊﨑みゆきさんの挨拶でイベントはスタート。
「コロナ禍は生活に多大な影響をもたらしましたが、企業のデジタル化の推進や新たなサービスが生まれるきっかけにもなりました。地域経済を立て直して社会を変えていくのは、新たなアイデアや技術を持ち、やる気に満ちあふれたスタートアップだと考えます」とこの数年を振り返り、受講生にエールを送りました。
続いて株式会社ゼロワンブースター執行役員の桑田靖章さんが「五反田バレーアクセラレーションプログラム」の目的や半年間の活動の様子を紹介しました。
3期目となる今年度は、イノベーションを活性化させる「交流」を重視。受講生同士だけでなく先輩起業家やサポーター企業、支援者との交流機会をプログラムに組み入れ、コミュニティ構築を目指したそうです。
半年間の集大成となる15名のプレゼンテーション
いよいよ受講生15名によるピッチが始まります。1人5分程度で、この半年間でブラッシュアップしたビジネスプランを発表しました。
タノシル株式会社 織田 かおりさん
株式会社セラピア 田中圭さん
※以下、各社の発表内容を記載
1.白澤光純さん
建設業界で働く職人の位置と空き時間を見て、最短2時間からスポット工事を依頼できる受発注サービス「コンクルー」を提供。職人の収入の低さ・不安定さと職人不足問題の同時解決を目指します。
2.株式会社テックシンカー 洪偉豪さん
CO2排出量を可視化する事業を展開し、脱炭素社会の推進や気候変動に対する問題意識の拡大を目指します。カーボンオフセットへの取り組みは専門性が高く、手間がかかるとされていました。それらの課題を解消し、環境企業の商品差別化やブランド力を強化します。
3.株式会社EnergyColoring 高橋真吾さん
廃棄されるスマートフォンをAI/IoT電流計としてリユースし、消費電力を測定・可視化するサービス「Energy Coloring」を提供。空調・照明・OA機器などの消費電力量とともにCO2排出量がリアルタイムで確認できる新サービスの提供も開始しています。
4.株式会社Neeew Local 濱田健太郎さん
アーティストと施設をつなぐマッチングプラットフォーム「Coresuki」を運営。アートワークショップの企画・運営も手がけています。アート×異業種をビジョンに掲げ、アートを中心とした経済の活性化を目指しています。
5.タノシル株式会社 織田かおりさん
親の持つ知識やスキルだけでは提供しきれない子どもの経験を購入できるサイト「タノシル」を運営。未来に期待し、明日が楽しみでワクワクする学びや体験を社会に提供することをミッションに掲げています。
6.株式会社セラピア 田中圭さん
初めてIT化に取り組む中小企業に向けて、ノーコードに特化した人材研修を提供します。現場担当者がノーコード技術を習得すると、業務改善や新規事業開発のスピードが加速します。
7.株式会社KUIX 小竹三郎さん
DX型情シス人材紹介サービス「ジョルパ」を提供。DXが求められている世の中で、導入のハードルを下げ、企業のデジタル化とデータ活用をサポートしています。デジタル活用の戦略策定からシステム導入まで、トータルで支援します。
8.株式会社contronym 藤田隆太さん
世界中の優秀なWeb3人材と出会えるSaaS「METAWORKS」を提供します。求職者に対して完全審査制で運営。有望な求職者に対して採用者が独自のトークンを購入する仕組みを採用し、第三者評価による信頼性を担保することが特徴です。
9.株式会社フロンティアチャンネル 野本彩乃さん
音声認識やAIを活用することで人的作業を減らし、効率よく動画編集できるソフトウェア「You CHANNEL」を開発。YouTubeやTikTokといった動画配信プラットフォームを活用したマーケティングが主流になる中、動画編集にかかるコストや時間、リソースなどがかさんで困っている個人や企業を支援します。
10.株式会社リモフィ 壹岐隼人さん
メンバーシップ型公式撮影プラットフォーム「REMOPHY」を提供。ライブ配信の視聴者が、好きなタイミングで撮影した写真を公式に所有できるサービスです。撮影ポイントを分析し、ファンの熱量を可視化。視聴者は撮影や写真の所有により「推し活」の心理的な満足感が得られ、配信者はコンテンツ力の向上が見込めます。
11.株式会社Kraft beer 濱口恵さん
自分の好みに合ったビールを自動で選定できるアプリを開発。過去に飲んだ銘柄の履歴や似た銘柄を好む人々の傾向から、AI解析を用いて好みに近いビールを算出します。多種多様なビールを提供する店側のスキル不足や飲む側の「どれを選んだらいいか分からない」という課題を解消します。
12.ソレイワ株式会社 赤川栄二さん
がん患者と家族のための「がん療養生活情報室」を運営。安心して治療に臨める環境を実現するには、療養生活を送る患者への正しい情報提供が必要です。患者や家族が的確に情報収集できるサイトを運営します。
13.レイかほりさん
「日常で忘れたくないと思うことがあるけど、忙しくて日記などはつけられない」という人に向けたサービス「記憶の貯金箱」を開発中。日常が忙しなく過ぎていってしまう共働き世帯が多い中、幸せな記憶をしかるべきタイミングでタイムカプセルのように届けるサービスを目指します。
14.株式会社シーテックヒロシマ 今井道夫さん
海をデータ化し、海に関わる産業をアップデートするプラットフォーム「Seatec HIROSHIMA」を提供。フジツボを切り口に海の課題を解決します。テクノロジーの活用で世界中の人と海をつなぎ、持続可能な海洋産業の実現を目指します。
15.エピストラ株式会社 小澤陽介さん
AIとロボットで研究開発を加速する技術を開発。主に生命科学分野の生産プロセスで活用され、研究開発期間の短縮を実現しています。技術承継が難しい分野において、人間の研究者と同じように計画・実行・評価を繰り返すことで重要な条件を効率的に発見できます。
受講生やパートナー企業など約70人が発表に聞き入ります
各ピッチ後は、パートナー企業による講評が行われました
総評と交流会
15名のプレゼンテーションが終了。株式会社ゼロワンブースター執行役員の桑田靖章さんが総評を述べました。
「それぞれの分野で異なる課題に取り組まれており、これから時代が変わっていくのを改めて実感しました。社会に新しく生まれた需要を皆さんが見つけていることも、とても勉強になりました。今後の事業成長が本当に楽しみです」(桑田さん)
「本日の参加者とたくさん交流して事業成長に繋げていってください。本当にお疲れ様でした」
一般社団法人五反田バレーの代表理事を務める中村岳人さんの乾杯の挨拶で交流会がスタート。受講生はもちろん、各ピッチの講評を述べたパートナー企業の担当者が参加し、これまでの半年間を振り返る場となりました。
地域の特色を生かした今後の展開は?
今期の「五反田バレーアクセラレーションプログラム」の振り返りと今後について、品川区地域振興部商業・ものづくり課 創業支援係長の笠原浩司さんにお話を伺いました。
ーー今回のプログラムは交流機会が重視されていました。受講生同士の「横のつながり」からは、どのような効果が生まれると考えていますか。
起業家は孤独を感じやすいため、ビジネス分野は違えど同じ目標に向かって挑戦している仲間の存在が重要だと思っています。「仲間たちが頑張ってるから自分も頑張ろう」「ステップアップしていく周囲に早く追いつかないと」といった前向きなマインドになれる環境が望ましいのかなと。今期はコロナ禍の状況を見つつ対面での講義や交流会を開催することができました。
ーー全国各地でさまざまなアクセラレーションプログラムが実施されるなか、改めて「五反田バレーアクセラレーションプログラム」の特徴や強みをどのように捉えていますか。
2020年から開催を続けてきたことで、学研ホールディングス(西五反田2)やローソン(大崎1)など、五反田周辺エリアに本社を構えるパートナー企業が増えてきました。スタートアップの成長を後押しし、また、スタートアップとの連携に理解がある各企業から協力を得られることは、この地域のポテンシャルだと感じます。
ーー今後について教えてください。
次年度以降も、急成長したいと考えている起業家やスタートアップの皆さんにどれだけ集まってもらえるかが重要です。そのためには、五反田がスタートアップ企業の集積地であることや、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」について、より一層の認知拡大を図りたい。将来的には、地域から新しいビジネスを生み出すエコシステムを構築できたらと考えています。
次回の開催情報やプログラムの詳細は、五反田バレーアクセラレーションプログラムの公式サイトをご覧ください。
(文:岩井奈緒子 編集:森夏紀/ノオト)