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リモートワークを継続するか、出社スタイルに戻すか——五反田バレー企業が考えるウィズコロナの働き方

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緊急事態宣言が解除され、街も人々も少しずつ日常を取り戻しつつあります。そんなウィズコロナ時代において、企業はある悩みを抱えています。

このままリモートワークを継続するか、社員に出社させるスタイルに戻すか……。

コロナ禍に伴う外出自粛要請により、多くの企業がリモートワークを実施していました。まだ収束したとは言えないものの、落ち着きはじめた現状において、出社スタイルに切り替える動きも出始めています。

五反田バレー会員企業とスポンサー企業を含む五反田の企業は、ウィズコロナの働き方についてどう考えているのか。5社の担当者がオンラインの情報共有会を実施しました。その様子をご紹介します。

参加者:
コグラフ株式会社 森善隆さん 中村洋一郎さん 伊藤昌徳さん
株式会社ヒトカラメディア 野田賀一さん
株式会社テーオーシー 黒川晃さん
balconia株式会社 秋山太郎さん
有限会社ノオト 水上アユミ(筆者)

5社すべてがリモートワークを取り入れた働き方に変更

コグラフ中村:みなさんの会社は、6月現在どのような働き方をしていますか?

ヒトカラメディア野田:ヒトカラメディアは、基本リモートワークになりました。来客対応やリモート疲れになったら、息抜きにオフィスに来てもいいという方針です。だいたい週1〜2回ほど出勤すると想定しています。それにあたり、7月からオフィスを中目黒から下北沢へと縮小移転します。もともと多くのプロジェクトを抱えていて外出するメンバーも多く、オフィススペースを持て余していたのもあり、コロナ以前から移転を決めていました。

ノオト水上:ノオトも、引き続きリモートワークです。編集業のほかに、コワーキングスペース「Contentz」の運営作業を社員が持ち回りで担当しています。今のところ、1人あたり週2回ほど出社するスタイルで落ち着いています。

balconia秋山:balconiaも、コロナ禍で95%くらいの社員がリモートワークになって、今も継続しています。

コグラフ伊藤:コグラフは、リモートワークをやりながら、「Remo」というWeb会議システムでバーチャルオフィス空間を作り、そこに集まって仕事しています。Zoomだと1つの部屋に全員が集まる仕様ですが、Remoは1つの部屋の中に複数のテーブルを作ることができ、会社でいう個人デスクや会議室のようなものを再現できるんです。

Remoで作ったコグラフのバーチャルオフィス。テーブルに集まった人同士で会話ができ、他のテーブルの会話は聞こえない。

ヒトカラメディア野田:これって自分がいるテーブルに誰か来たら会話しなきゃいけないんですよね。監視されている気がしちゃうんですが、実際はどうですか?

コグラフ伊藤:話しかけてほしくないときのために「集中エリア」を用意しています。ここのテーブルにいる人には、話しかけちゃいけない。そのように運用ルールを作っているので、監視されている感じはありませんね。むしろ、今話しかけていいかどうかわかりやすくなって、コミュニケーションのストレスは減りました。

テーオーシー黒川:みなさん基本はリモートワークなんですね。テーオーシーは、各部署が2班に分かれ1日ごとに交互に出社していて、リモートと出社が半々といった具合です。部署ごとに区切って出社してしまうと、出社する人数は減っても同じ場所に人が集まってしまうので、あえて部署を2つに分けました。これによって、社内のレイアウトを変更することなく、密集も防いでいます。

コグラフ中村:やっぱりどの会社も、リモートワークをうまく取り入れながら、コロナ前とは違う働き方に変更しているのですね。

五反田のオフィス移転状況。8月以降に移転の波がくる?

ヒトカラメディア野田:弊社はオフィス移転の支援をしているのですが、3月に緊急事態宣言があり、これまで移転を考えていた企業が軒並みキャンセルになりました。4月にはリモートに切り替える企業が多くなって、「オフィス不要論」をちらほら耳にするように。でも、5月にはリモート疲れやコミュニケーション問題で再びオフィスの必要性が注目されるようになりました。

そこで6月の状況はどうかというと、緊急事態宣言は解除されたけど、移転を再検討するお客さんはでてきていない。ビルの建て替え、解約が決まっているなどやむを得ない事情がある会社以外は、様子見といった感じですね。

コグラフ中村:コロナ禍以降、移転する企業はゼロだったのでしょうか。

ヒトカラメディア野田:4月〜5月にすぐオフィスを解約した企業は、何社かいらっしゃいました。それらの多くは、エンジニアが集まる企業です。これまでもリモートワークを検討していたけど、クライアントの都合でできなかったそうで、コロナをきっかけにフルリモートに切り替える決断をしていました。

balconia秋山:弊社もエンジニアが多く、以前からリモートワークを検討していたのですが、コロナ前はセキュリティ面の問題でクライアントからSkypeやZoomの使用を禁止されていました。けれどもコロナ禍の状況では、逆にクライアントからリモートワークを推奨されるようになりましたね。

ヒトカラメディア野田:エンジニアが多い会社は、身軽に移転やオフィス縮小する傾向がありますね。一方で、内勤営業や外勤営業が多い会社は、対面のコミュニケーションを重視するので、なかなか踏み切れずにいるみたいです。あとは組織内が階層に分かれている会社は、育成・マネジメントの観点でリモートにやりづらさを感じているとも聞きます。

ノオト水上:組織の特徴によって、リモートワーク導入の課題はさまざまですね。

ヒトカラメディア野田:今は、企業がオフィスの在り方について再構築しなきゃいけないフェーズにきています。今まで100坪借りていたけど、本当は50坪でいいかもしれないし、もっと削って30坪でもいいかもしれない。今後社員がどのくらい出社するのか、会社が把握して適切なスペースを確保するべきでしょう。

動きが早い企業はすでに「週○日は出社、週△日リモート」と独自の方針を打ち出して、6月〜7月にかけて検証をしています。その結果を見て縮小するかどうかを決定するので、8月以降はオフィス移転の波が来る予感がしますね。

コグラフ中村:社員の出社頻度を踏まえて適切なスペースを見極めるとのことですが、今後の方針を社員に委ねるということですか?

ヒトカラメディア野田:社員の意見と生産性を加味した上で、決定するのがいいのではないでしょうか。社員からは「出社したい」「自宅でやりたい」などいろんな声が出てくるので、それらと成果のバランスを見て、会社側がまとめるのがベストだと思います。

ただ一点気になるのが、採用活動をするときに今後は「リモートもできます」と言えないと、「この会社は融通きかないな」と求職者に思われるかもしれません。出社スタイルにしたことで採用がうまくいかなくなる、という状態も考えられます。

コグラフ中村:現職社員の働き方だけでなく、今後の採用活動にも関わってくるのですね。だからこそ、この数カ月はオフィスの在り方について、しっかりと考えるべきですね。

オフィス縮小で注目されるレンタルオフィス、コワーキングスペース

ヒトカラメディア野田:ノオトさんはコワーキングスペースを運営していますよね。コロナ禍になり、問い合わせは増えました?

ノオト水上:ありがたいことに、度々お問い合わせをいただきました。ただ弊社のコワーキングスペースでは利用者が増えて密集することを避けるために、新規入会は5月末まで一旦休止していました。6月からは通常営業になり、最近は施設内を見学したいという方が何名かいらっしゃいました。

ヒトカラメディア野田:やっぱり問い合わせがあったのですね。なんで聞いたかというと、お客様から最近「オフィスを縮小するので、レンタルオフィスやコワーキングスペースの契約を考えている」と相談されることが多くなってきたからです。本来弊社は、賃貸オフィスの仲介を行っていましたが、こうしたニーズに合わせてレンタルオフィスやコワーキングスペースも提案するようになりました。

balconia秋山:ちょうど最近同じことを考えていて、少人数で借りられる施設を5カ所視察してきました。施設によって、拡張できる個室を提供したり、コワーキングメインで運用していたり、大勢のグループをターゲットにするか、個人をターゲットにするかの違いが明確に出ていました。

個人をターゲットにした施設でも、例えば30席契約して、100名の社員で入れ替わり利用できるハイブリッド的な使い方もできる可能性があると聞きました。各社試行錯誤していて、オフィスを借りる側もうまく乗っかっていかないとな、と。

ノオト水上:企業のニーズに対し、柔軟に対応できるレンタルオフィスやコワーキングスペースの需要が高まりそうですね。ちなみにオフィスを縮小する場合、どれくらいの広さが求められるのでしょうか。

ヒトカラメディア野田:30~50坪くらいで探すお客様が多いですね。バックオフィス+コミュニケーションスペースの機能がおさまるのが、ちょうどこのレンジなんです。

リモートワークを続けるなら、組織の運用面を見直そう

コグラフ中村:弊社で、米国内の日系企業に勤務する方を対象に「リモートワーク」に関するアンケート調査をしました。「このままリモートワークを続けたいか」の問いに対し、一人暮らしと子育て世帯の人は「オフィスに戻りたい」、パートナーと二人暮らしの人は「リモートのままがいい」という結果に。

一人暮らしは「寂しい」「オンオフの切り替えができない」、子育て世帯は「子どもが横にいたら仕事ができない」などの意見があり、二人暮らしはそのどちらのリスクもないので在宅を希望する割合が高いようです。

ヒトカラメディア野田:自宅環境は、生産性に大きく関わってきますね。あとは職種やキャリアにもよると思います。自発的に仕事を取ってきて働ける人ならリモートワークは天国ですが、入社したばかりで誰かと一緒にやらないと不安な人にとってはストレスしかない。何をしていいかわからず、サボりたくないけどサボらざるを得ないケースもあるようです。

コグラフ森:コグラフは、リモートワーク継続にあたり評価制度を見直しました。もともとあった評価制度に加えて、一人ひとりのやるべきタスクを定量化し、その成果も評価要素として加算します。リモートワークで見えづらい個人の仕事ぶりを、全社員に共有して、納得できる評価制度を整えられるように試行錯誤しています。

ヒトカラメディア野田:コグラフさんのように、評価制度を含め、組織の運用面をガラッと変えなきゃいけない局面にきています。こうした施策を考えるバックオフィスの社員は、ウィズコロナ時代とくに大変だと思いますね。

コグラフ森:個人的に、リモートでのコミュニケーションにはものすごく可能性を感じています。例えば、リモートになったことで、今までオフラインでつながっていた社員がオンラインで常時つながれるようになった。それが今後はクライアントとも、オンラインで常時つながれるようになるかもしれない。社員と雑談をする感じで、クライアントと話せるように仕事をしたらどうなるのか興味があります。

あと、地域とリモートを絡めるのも面白い。「バーチャル渋谷」が話題になりましたが、五反田でも何かできるんじゃないかなって。

ヒトカラメディア野田:渋谷と違って、五反田は「働く」と「暮らす」が一緒になっている。今後リモートワークの普及によって、「働く」と「暮らす」の境目がどんどん曖昧になり、そこをどうデザインするかが今後生きる上でのテーマになる気がします。だからこそ、リモートワークの普及が五反田エリアに何かしらの影響を与え、ブランディングの要素になるのではないかと、私も期待しています。

 

(文:水上アユミ/ノオト 編集:杉山大祐/ノオト)

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