テレワークの普及と共に、駅やオフィスビルなど、街中のいたるところで目に入るようになった「テレワークブース」。ビジネスパーソンが外出先でも仕事をするために設置されているもので、電話ボックスより一回り大きな見た目で、中にはデスクワーク用の机や椅子が。ブースの中ではちょっとした作業をしたり、Wi-Fiを用いたWeb会議などに参加したりすることができます。
少しずつ種類が増えているテレワークブースですが、中身はどうなっていて、それぞれどのように使用できるのでしょうか。都内でよく見かけるテレワークブースのサービス3種類を、実際に使ってみました。
JR駅のすぐ近く、利便性の「STATION BOOTH」
まず足を運んだのが、JR東日本による「STATION BOOTH(ステーションブース)」。五反田駅はもちろん、JRの駅に幅広く配置されており、移動中に見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。
今回使用したのは、JR五反田駅改札内のSTATION BOOTH。入ってみると、部屋の中の様子はこんな感じでした。
1人分の作業スペースとしては最小限の部屋と、そこに備え付けられたデスクと椅子。椅子は自分で場所を動かせない回転椅子で、「椅子と机がある、少し広めの電話ボックス」という感じでしょうか。使用できるのは、ブース専用のWi-Fi、充電用のUSB端子と電源コンセント。あとは季節で気温を管理するためのエアコンが足元に備え付けられています。
そして今回使用したJR五反田駅のSTATION BOOTHには、作業用のモニターが設置されていました。HDMI端子のみ使用できるため、パソコンの機種によってはアダプターを準備する必要があります。STATION BOOTHは場所ごとに設備が異なっている場合があるものの、ほぼ同じ。使いたい場所があるときは、事前に設備を確認しておくといいでしょう。
そんなSTATION BOOTHの使用感は、電車を使った移動までを意識した「短時間の作業にちょうどいいブース」といった印象でした。
先にお伝えしたように、STATION BOOTHは椅子も動かせず、机のスペースも限定的。人によっては窮屈さを感じてしまう場合があるかもしれません。身長が178cmの筆者の場合は椅子から立ち上がることや上着の脱ぎ着に苦労するサイズ感で、体が大きい人にとっては不自由なケースも多いかも。
▲STATION WORK公式Webサイト(https://www.stationwork.jp/)より
一方で、STATION BOOTHが特に便利なのが「会員登録しなくても使用できる」「事前予約をしなくても使用できる」ということ。これは、今回使用してみた3社のブースの中では唯一の特徴です。
また、JR東日本によるサービスということもあり、「都内にあるJRの主要駅にはだいたい設置されている」と言っても過言ではありません。オープンスペースでは無理な、緊急の要件に対応する必要がある時には特に重宝しそうです。
そしてSTATION BOOTHのもう一つの強みが、「ブースから駅改札までの距離がとても近い」こと。ブースを出てから駅までの移動時間がかなり抑えられるため、「移動時間の隙間に、少し入ってみる」という使い方で、最も強みが発揮できるかもしれません。
ちなみに品川区内付近の設置ブースは以下の通り。
・品川イーストビル2階エントランス(4ブース)
・五反田駅改札内(1ブース)
・大崎北改札内(3ブース)
・大崎駅改札内(2ブース)
・大井町駅中央改札外 階段下(2ブース)
・高輪ゲートウェイ改札外 スターバックス コーヒー内(2ブース)
まとめ
・事前予約が不要で「空いた時間に飛び込みで使える」STATION BOOTH
・駅直結のブースが多く、JR沿線のユーザーが特に便利
・スペースは必要最小限で、長時間の作業には不向き
STATION BOOTH
基本料金:15分につき275円(1人用のSTATON BOOTHの価格)
https://www.stationwork.jp/
ソファーでゆったり、快適性の「テレキューブ」
次に使用したのが、テレキューブサービス株式会社による「テレキューブ」です。
ブースに入ってみてまず、デスクや正面に設置されたソファーが広々としていると感じました。設備はとてもシンプルですが足元のスペースは広く、パソコンを広げて机に向かっても快適。ソファーに座ってゆったりひと息つけそうな印象です。
使用できるものは、USB充電端子と電源コンセント。今回体験したブースには、サーキュレーターとスマホスタンドが設置されていました。モニターはないものの、そのぶん机の上が広々と使えそう。例えるなら、「ファミレスのソファー席」といったところでしょうか。
実際に作業をしてみても、この「広々としたスペース」というのはとてもメリットが多く、体が大きめな筆者でも快適。時間さえゆるせば、ブース内で仮眠を取ることもできそうなほどです。
▲テレキューブ公式Webサイト(https://telecube.jp/)より
一方で、設置箇所がまだ限られていることと、使用にあたって「会員登録」と「事前予約」が必須、というのは覚えておかなければいけないポイント。「見かけたから、今すぐ入ってみよう」という使い方はちょっと難しいかもしれません。
しかし考え方を変えれば、これは「予約さえすれば、30分550円で快適なスペースが確保できる」ということ。事前にサービス登録し、自分の行動範囲にあるテレキューブをあらかじめ把握しておけば、「外出中に時間が空くことがわかったら、事前に予約を入れておく」なんて使い方ができるように。「カフェを探して放浪するよりもコスパがいい」という考え方もあるはずです。
設置場所に関しては、駅というよりもオフィス街に近い場所に点在しているのがポイントです。JR沿線以外にも小田急沿線や東急沿線に設置されている駅が多く、JR圏外で行動することが多い人は使用を検討してみてはいかがでしょうか。
ちなみに五反田・品川駅周辺のブースは以下の通り。
・品川シーサイドパークタワー 1階 エントランスホール(3ブース)
・太陽生命品川ビル 2階(2ブース)
・五反田第一生命ビル(1ブース)
まとめ
・ソファーとゆったりスペースで使用できる「テレキューブ」
・モニターがないが、広々とした作業スペースで仕事できる
・会員登録と事前予約が必須だが、幅広い路線で使用可能
テレキューブ
基本料金:15分につき275円(15分単位価格)
https://telecube.jp/
椅子を動かして、幅広い使い勝手の「CocoDesk」
3つ目に足を運んだのが、富士フイルムビジネスイノベーションによる「CocoDesk(ココデスク)」です。
入ってみての第一印象は、「ホテルの仕事スペースみたい!」というもの。ブース室内が明るめだったSTATION BOOTHとテレキューブに対して、落とし目の照明による落ち着いた雰囲気が印象的です。
広めの机にはモニターが設置されており、Wi-FiとUSB端子、電源コンセントとミニ扇風機が使用可。設置されているモニターはHDMI端子もしくはVGAケーブルで使用できるもので、Macユーザーは事前にアダプターの準備が必要です。
CocoDeskが特徴的だと感じたのが、椅子が固定ではない、移動できるタイプのものということ。これにより「机の下に荷物を置く」などして足元のスペースを有効活用できたり、机と自分の距離を調整して好きな体勢で仕事ができるようになったりと、一見地味ですがうれしいポイントがたくさん。
「椅子を動かせることで、これだけスペースが有効活用できるとは!」という大きな発見がありました。足を広げる、組む、椅子を動かして姿勢を変える……が自由にできることのありがたいこと。
▲CocoDesk公式Webサイト(https://www.fujifilm.com/fb/solution/menu/cocodesk)より
そんなCocoDesk。調べてみると品川・五反田付近で使用できる場所は少し少なめという印象ですが、これは同ブースが東京メトロ沿線を中心に展開している、という理由によるもの。新宿三丁目駅、銀座一丁目駅、半蔵門駅、大手町駅など東京メトロ主要駅にはほぼ設置されている様子です。
例えば「取引先から取引先への移動」という場面を想定したとき、大きな乗り換え駅や目的地周辺には、かなりの確率でCocoDeskが設置されているはず。
テレキューブ同様に使用にあたって会員登録と事前予約が必要ですが、東京メトロユーザーは便利に活用できるはずなので、サービス登録しておいて損はないかもしれません。
品川区内でCocoDeskが設置されている場所は以下の通り。
・品川イーストワンタワー 2階(2ブース)
・品川シーズンテラス 3階(2ブース)
まとめ
・椅子の場所が動かせて、自由に使える「CocoDesk」
・ブース自体はシンプルだが、椅子によって使い勝手の幅が広がる
・会員登録と事前予約が必須だが、東京メトロ沿線では便利かも
CocoDesk
基本料金:15分につき275円(個人プラン)
https://www.fujifilm.com/fb/solution/menu/cocodesk
自分のライフスタイルにあわせて、ブースを活用したい
都内でみかける主要3サービスのテレワークブース、使ってみるとそれぞれの特徴がわかりました。現段階では事前予約や会員登録が必要な場合が多いことを念頭におきながら、自分の予定やその日の行動にあわせて、自分の生活にあったサービスを活用したいです。
最後に、ブース使用にあたっての注意点をいくつかご紹介します。
「◯時からのWebミーティングでブースを使用したい」場合
事前予約をする場合、どのサービスもブースに入れるようになるのは「予約時間ジャストから」。なので、「15時からのWeb会議に参加するために、15時からブースを予約した」のでは、入室やWi-Fiの接続などに時間が取られ、会議スタートにはおそらく間に合いません。
加えて、ブースによっては退出時間5分前から定期的に音声アナウンスがなされます。これはWeb会議にはよろしくない。ですので、会議のために使用したいのであれば前後にバッファを持ち、ブースを少し早めの時間から予約するのがおすすめです。
ブースの防音性能は、設置されている場所次第
今回紹介したブースはどれも個室かつ防音性能に優れたものでした。1人で作業するのには十分な音環境を確保できるものの、一方で「ブース内がどのくらい静かか」はブースが設置されている場所に大きく左右されるケースがほとんどです。
当然、駅の近くや改札の目の前にあるブースは騒音が気になることも。「音環境は、設置されている場所に左右される」と覚えておくのが良いかもしれません。
文=伊藤 駿/編集=ノオト